第1話 現実ラブコメ。急遽終了のお知らせ。

自己紹介も終わり、とうとう現実の状況を説明しなければならないがものすごく気が乗らない。

 (現実を見ないとなぁ)

「はぁ」

 俺は周りに気づかれない程度の小さいが、この上なく心のこもったため息をつき、寝たふりで突っ伏していた頭を少しあげて前の席に群がる女子たちとそれに囲まれる男子のグループをを見る。

 顔を上げた瞬間、まさにラブコメの雰囲気というべき、地味目男子の周りに美女たちが募る空間に目は奪われ、耳にはさっきまで腕で遮断していたラブコメとも言うべき会話が聞こえてくる。

「翔斗くん。今日空いてないか?生徒会のことで少し相談したいのだが」

 そうみんなに囲まれ、中心にいる男主人公を誘ったのは我が高校の生徒会長であり、一つ上の先輩である真木まき 京香きょうか先輩だ。

 黒髪ロングストレートと言うザ•先輩ヒロインとも言うべき綺麗な黒髪に、さらには趣味がテニスということもあり、プロポーションも素晴らしいというヒロインっぷりである。

 ちなみに、ラッキースケベ回数は二回である。

 彼女はグイッと中心の男主人公に自分の顔を近づける。

「とうかな?」

「え、えぇと…」

 ちょっとそこのラブコメの主人公ー。惹かれるのは超わかるが明らかに寄せられた胸をチラチラ見るのはやめなさい。

「ちょっと!翔斗は今日私と一緒に駅前のクレープ屋の新作を一緒に買いに行組んだけど!」

 そう言って二人の間にピンク髪ショートヘアの女子が入り込む。彼女の名は柊 苺。元気はつらつのバトミントン部のエースであり、背が小さいのに関わらず、持ち前の運動センスで弱小だったバトミントン部がこの二年で中堅ぐらいだと言われるようになったという。見た目は典型的な二番目ヒロインというタイプで、貧乳、幼馴染、普段結構積極的なのにいざという時にツンデレが出るという典型的な負けヒロインだ。(偏見)

 ちなみにラッキースケベ回数は二番手ヒロインだからなのか、多めで五回である。

「と、いうわけなので京香先輩。今日はちょっと…」

 それを聞いて真木先輩は少し残念そうに引き下がる。

「なら仕方ないな。また今度!絶対だからな!」

「はい。また今度」

「それに!中間考査も近いのだからあまり羽目を外しすぎるなよ!」

 真木先輩は負け犬の遠吠えのように注意する。

「わかってますって」

 そう言った主人公は何かを思いついたように後ろを振り向く。

「あ!そうだ未来もどうだ?」

「え?私?」

「あぁ。未来もクレープ食べたいって前言ってたよな?」

「うん!私いきたい!」

「よし!なら三人で行くか!」

 そうして急遽、主人公の後ろにいた女子が主人公と二番手ヒロインのデートに割り込むように参加することになった。

 何を隠そう彼女こそがこのラブコメのメインヒロイン(予想)である東雲しののめ 未来みらいだ。

 見た目は黒髪のセミロングを二つに結ぶ清楚な雰囲気があり、顔は言わずもがなの美少女で見た目だけではどちらかと言えば負けヒロインっぽいが、彼女はこれまでのこのラブコメで圧倒的メインヒロインフラグを立てまくっている。それらを紹介していこうと思う。

 まず一点目は彼女がこの学校に転校してきてそれがこのラブコメの始まりになっているという点だ。

 最初はどちらかと言えば陰キャでボッチ気質な主人公がなんでか彼女の世話役に任命されるというところに始まり、それからどんどん主人公の周りでラブコメイベントが増えていったのでこれが始まりであることは明確である。

 まずこの時点で、もうほぼ確定だろう。

 そして二つ目は東雲さんは主人公のお陰で彼女の弱みを克服できているという点である。

 最初は引っ込み事案で周りに気を使い気味だった東雲さんが主人公とのデートイベント、などを経て、今ではだいぶ自分を出せるようになってきた。

 ちなみにそのデートイベントの名シーン(自分の好み)はやはり綺麗な夜景をバックに自分に自信がない東雲さんに対して主人公が全力で肯定して、ヒロインが涙ながらも自分に自信が持てるようになるシーンである。

 

 三つ目は明らかに主人公が惚れているという点だ。

 これが圧倒的な理由だ。

 今に関しても、わざわざ主人公は東雲さんを誘っている。たまたまのように見えるが、こんな匂わせのようなことを何度もしていたり、不自然なほど彼女に近づこうとしていたりなど明らかに惚れている。さすがに二次元のラブコメほど顔に出たりしないため、わからないが、彼女と喋るたび主人公の頬は少し赤くなっているなような気がする。

 ちなみに彼女はラッキースケベ回数は二回と幼馴染に比べて少ない。

 

 そして何より俺の推しである。

 現実で推しを作るなど言語道断だと思う人もいるだろうが、あえて言おう。

 現実の女子がラッキースケベを起こすだろうか?

 転校生が来だことをきっかけに地味目男子が急に美人美少女たちに好かれるようになるだろうか?

 否!ありえない!

 そこまで現実世界で現実離れしたラブコメを繰り広げた彼女ヒロインたちははもう神が作り出した三次元の中に作られた二次元。つまり二.五次元であると言えるだろう。

 

「え〜!私、翔斗と二人が良かったぁ」

「でもみんなで言った方が楽しいって!」

 柊さんが粘るが、それをサラッと主人公にいなされる。

 

 そして最も紹介すべき、さっきから中心の男だの主人公だの言っている男の紹介をしよう。

 彼の名は玉村 翔斗。これまで言った通り、彼はこの俺があり得ないと豪語していた常識を覆すこととなった現実世界でのラブコメの主人公である。

 陰キャだったのにも関わらず、美人転校生の世話役になったことをきっかけに、幼馴染、生徒会長に好意を持たれるようになる(幼馴染の方は元々好きだったようだが)というスーパーラッキーボーイである。

 

 これで今、目の前で起きているラブコメの説明は終わるわけだが、最後におそらくこの説明の中でもっとも謎な部分を説明しよう。

 なぜ、さっきぼっちとか言ってた俺がそんなデートとかラッキースケベ回数とか知っているのかと言う謎だ。

 しかし理由なんて簡単なことだ。最初にも言った通り、俺の趣味は人間観察である。しかも、小さい頃からやっているため、そのスキルはもはやプロ並みだ。(プロがあるかは知らないが)なので大体の放課後や、休みの日は培った人間観察のスキルでずっと玉村の周りに起きる出来事を観察していた。それこそデートだったり、海イベントだったりもだ。ストーカーとかいう人もいるかもしれないがあえていうと、

 これは人間観察であり、決してスーキングとかそういうのではない!多分…。

 まぁそんなこんなで現実世界ラブコメはもう最終局面に差し掛かりつつあるのだった。

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