現実ラブコメのヒロインはやはり裏があるようです。

@MOB150

プロローグ

「ありえないだろっ!」

 俺は少し傾いた日が当たる放課後の空き教室で極力小さな声でそう叫ぶ。

 (そうだ!あり得るはずがない!ただでさえ、この世に起きてはならないラブコメ展開が起きてるのに!しかも!それがよりによって俺に起きているなんてことが現実な訳がないだろ!でも…)

 俺は恐る恐るさっきから妙に重い右肩に視線を落とす。

「すーすー」

 目に入ってくるのはこの世で絶対に起きないと確信していたラブコメのヒロイン。さらにいうと負けヒロインの寝顔だった。

 (どう見てもラブコメのひとシーンなんだよなぁ!

 なんかいい匂いするし!さっきから右肩に神経が集中しまくってるし!

 くっそ!本当になんでこんなことに!)

 

 話は一週間前に遡る。

 

 さて、いきなり意味のわからない場面を見せられ回想に入ってすぐで突然だが自己紹介をさせてもらう。

 俺は志波 晃。

 好きなものはアニメ、ラノベ、漫画など典型的なヲタクだ。

 しかしそれらの好きな理由としては根本的に見るのが好きだからというのがある。

 俺は生まれて、自意識が芽生えてこのかたずっと見るのが好きだ。

 何事もするのではなく見ているのが至福だと思った。

 ゲーム、友情、冒険、恋。

 あらゆるものを見て過ごしてきた。

 これまでの人生でももちろんいろんなものを見るだけで過ごしてきた。

 小学生の頃はものすごく学校生活をエンジョイした。

 人生においてはじめての学舎とも呼べる場所ではじめての大人数で同じ物事をすることが面白くてたまらなかった。

 正確にいうとその環境の変化とともに個性が出てくる同級生たちの日常を見ることが好きなだっただけなので、友達はいないに等しかったが。

 それでも初めて個性が出始めた多くの同級生の生活を見てるだけで俺は十分楽しく過ごせた。

 

 そんな俺が中学生になり、見るものの代名詞である二次元にハマるのは必然だった。

 はじめてアニメを目にした時は感動した。

 こんな世界があるのだと心の底から震えた。

 沢山のアニメ、漫画、ラノベに至るまでをひたすら我を忘れて見て楽しんだ。

 そしてある日ふと我にかえり、現実の方に目を戻し、気づく。

 

 二次元と三次元はあまりにも違いすぎる。と

 

 どちらが良い悪いの問題ではなく、単純に全く違うものである。

 

 だから二次元のようなことは現実では絶対に起きない。

 

 異世界など当たり前、ラブコメなどの現実世界が舞台のジャンルに至っても現実とは似て全く別のものである。

 中学二年の秋、二次元にはまっていたこともあり、若干厨二病気味だった俺はそんなふうに悟ったのだ。

 その後も厨二病こそマシにはなったが根本的な考え方は変わらず、中学でも友達という友達はいないまま、高校生になった。

 そしてたった今も健全なボッチとして休み時間を自分の席で寝たふりをしながら突っ伏している。

 

 さて、長話になったが許してほしい。

 一体こんな長話して何を言いたかったのか、

 そもそもなんでいきなりさっき言った通り見る専の俺が自ら自己紹介しているのか?

 その理由はどちらとも簡単だ。何を伝えたかったと言われれば、

 

 現実の空気はラブコメには合わない。

 

 ということである。

  そして、なぜいきなり自己紹介をしているのか、それは一言で言ってしまえば現実逃避。そしてその現実とは、

 たった今!目の前で!二次元のものだと、現実ではありえないとさっき豪語したラブコメが現実で行われている。

 という状況からである。

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