第十八話 異質なダンジョン

 五人のハンターが、狼牙ボルクと出会っていた時、外の世界では……



「今日のダンジョンも簡単だったなー。もっと強いのと戦いたいよー」

「私は今日みたいに簡単だったら、早く終わるからこっちの方がいいよ!」

「強い方がいいに決まってるだろ!」

「すぐに終わる方がいい!」

「「んんんぅぅぅぅ!!!」」

「お前ら、無駄な会話は慎め。まだパトロールという任務中だぞ」


 ダンジョンを攻略し終えたS級ハンターの三人が、低級ダンジョンの安全確認のパトロールを行っていた。


誠司せいじはどっちがいいと思う?」

「もちろんすぐに終わる方だよね!」

「どっちでも構わん。俺はただ、みんなの安全のために責務を全うするだけだ」

「つまんねーの。真面目過ぎだよなー」

「そんなんじゃ、彼女ができないよ?」

「そんなもん必要ない」


 三人は、いつもの感じで会話をしていると、


 ―ビビッ!


「ん⁉ 急に魔力が上がったダンジョンがあるぞ!」

「この感じだと、A級くらいだなー」

「向かうぞ!」


 ―ビュゥン!


「えー! 早く帰りたいのにー」


 突如、魔力が大幅に変化したダンジョンがあることを、三人の能力の魔力探知で察したので、すぐにそのダンジョンへと向かう。


「ここだなー。ちゃんと警備員がいるなー」


 変化のあったダンジョンに着くと、そこには、しんたちがこっそり入ったダンジョンの警備をしていた人が立っていた。


「警備員さん、このダンジョンのランクはいくつですか?」

「Dですけど、何かあったんですか?」


 魔力探知を使うのはほとんどがS級だ。

 警備員は中ランクのハンターであるので、ダンジョンの変化に気が付かない。

 そのため、S級のハンターがパトロールをしているのだ。


「魔力に異変があったので来ました。これからダンジョンに入ります」

「そうなんですね。頑張ってください」


 そうして、三人はダンジョンの中へと入ろうとすると、


 ―バチンッ!


「「「弾かれた⁉」」」


 三人は、軽く飛ばされるほど勢いよく弾かれた。

 これまで、ダンジョンの魔力が変化することはあっても、ゲートに弾かれた事は無かった。


「すっげぇ! 初めて弾かれた!」

「面白いわね!」

「おい、これは緊急だぞ!」

「「うっ……」」


 誠司せいじが怒鳴ると、二人は焦った様子ですぐに黙り込んだ。


「このダンジョン、何かおかしいぞ……」



 ◆



「スキルって便利だよねー」

「そうか? 使用制限があるんだぞ? 魔法の方がいいと思うけどな」

「魔法は疲れるの。まあ使える魔力もないからわからないと思うけど」

「雑魚ですいませんね!」


 俺と優羽ゆうは、軽く休憩を取っている。

 そして、この間に様々なことを整理していた。


 ~~~~~~



 魔法とスキルは全くの別物であり、魔力は疲労が溜まるが、使用回数は使用者の魔力次第である。

 スキルは、疲労は溜まらないが、使用回数に制限がある。

 そして、どちらも休憩をしたり、食事を取ったりすると回復する。

 また、覚醒するための条件は一つだけで、それはレベルが最大であることだ。

 そして、自分自身が覚醒を望むと選択の画面が現れる。

 覚醒をすると、レベルが『1』になるが、最大能力値が上がったり、スキルを得たり回数が回復したりすることができる。



 ~~~~~~



「それじゃ、そろそろ再開するかー」

「そうだね!」


 俺たちがダンジョン攻略を再開しようとした時……


『きゃぁぁぁ!!!』


「叫び声か⁉」

「奥から聞こえる。あの人たちに何かあったのかもしれないわ」

「急ごう!」

「うん!」


 ―ゔ、ゔゔぁ、ぁ


「「おりゃぁぁぁぁ!!!」」


 ―ドガァァン!

 ―バキーン!


 俺たちは、道中の敵を簡単に倒しながら奥へと進んでいった。



「ここ、地面が抜けてるぞ⁉」

「下から微かに声が聞こえる。、この下にいるよ」


 俺たちは、ダンジョンの地面に大きな穴が開いているのを発見した。

 下からはほんの少しだが、声が聞こえる。


「降りたら簡単には帰ってこれそうにはないな。覚悟はしとけよ?」

「そんなもの、ここに来る前に決まってるよ!」

「ちょっ、おい!」

「先に行くよー!」

「早いって、この高さは怖いよ……」


 優羽ゆうは、俺を待たずにスカートを抑えながら飛び降りていった。


「スカートだと⁉ くそっ、先に降りていれば……」


 俺は、優羽ゆうの服装を思い出すと、先に降りなかったことを後悔した。

 自分の勇気の無さを悔やんだ。


「もういいや! 行ってやる!」


 そして、やけくそになり、穴へと飛び込んだ。

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