第十四話 希望の役職
―ピコンッ!
諦めた瞬間、頭の中で通知音のようなものが聞こえた。
「……これは、なんだ?」
すると、そこにはある画面が表示されていた。
~~~~~~
覚醒条件を満たしました。
覚醒をしますか?
<はい> <いいえ>
~~~~~~
―ギュ⁉
オークは、光によって、目が眩んだようで、姿勢を崩している
「かく、せい……?」
俺は、突如、画面に現れた表示が何か、全く理解していない。
わかることは、これが生きるための道だということだけだ。
一瞬で判断を下した俺は、消えゆく意識の中、できるだけ大きな声を出す。
「はい!!!」
―ピコン
―覚醒が完了しました
「は?」
あっけなく覚醒が終わったようだ。
身体に異変は無いし、むしろ、弱体化した気がする。
「ハハハ、最後の希望も役に立たないのか……」
―ギュアァァァ!!!
怒ったようにオークが鳴きながら再び、腕を振りかぶる。
「今度こそ、終わりだな……」
――ギュアァァァ!!!
だんだんと近づいてくる大きな棒を見た俺は、全身の力を抜き、完全に諦める。
―ピコン!
―スキル 【
「死ぬ恐怖で、幻聴が聞こえてきた。ハハッ、最後に使ってみるか……」
頭の中で、幻聴が聞こえる。
俺は、死ぬのが怖くて、おかしくなったのだと思った。
どうせ、何も起こらないだろうが、使ってみることにした。
「【
―ドガァァン!!!
「熱いし、うるさい。もう意識が持たない……」
◆
―ピチャン、
「んっ、頭が痛いな。あれ? 俺、オークに殺されたんじゃ……」
水滴が顔に当たり目を覚ますと、そこは、ダンジョンの中であった。
俺は、急いで意識が途切れる前のことを思い出す。
「これ、オークが持ってたやつだよな? ってことは、倒したのか?」
俺は、目の前にオークが持っていた大きな棒を見つけた。
これが落ちているということは、オークが倒されたことを示している。
このダンジョンには、俺以外のハンターはいないため、必然的に俺が倒したことになる。
「っ⁉ 確か、覚醒? とか言ってたぞ!」
ふと、覚醒のことを思い出し、慌ててステータスを表示する。
~~~~~~
<廻神 進(えがみ しん)>
・役職 覚醒者
・職業 未開放
・スキル
レベル1/15 次のレベルまでの必要経験値5
体力 1/15
打撃力 1/15
防御力 1/15
魔力 1/15
瞬発力 1/15
~~~~~~
「……役職、覚醒者?」
ステータスを見た俺は、真っ先に役職の表示に眼が行った。
役職は、『戦士』・『守護』・『魔術師』の三つのどれかに分かれるのだが、全く別の『覚醒者』という役職が表示されている。
「あの時、覚醒したからスキルが一つ増えたのか」
俺は、自分の役職について、ある程度の理解ができた。
俺は、覚醒することによって、能力値が上がり、スキルを得ることができる。
その代わりに、レベルが『1』となり、最大レベルも上がる。
つまり何度でも覚醒が可能であれば、覚醒すればするほど強くなれるということだ。
「これなら、俺は強くなれる!」
俺は、希望の光が輝きだしたように思えた。
まだまだ弱いが、これからもっと努力をして頑張れば、必ず強くなることができ、街を襲ったあいつらに立ち向かうことができる。
「よかった……」
―バタンッ
身体の力が抜けて座り込むと、視界がぼやけだした。
「あれ? 俺、泣いてるのか?」
これが涙だと気が付くが、止めることができなかった。
俺は、涙と共にこれまでの不安が全て流されていったような感覚になった。
しばらくして、泣き止んで視界をはっきりさせると、力強く立ち上がった。
「やってやるぞー!」
―やってやるぞー
―やってやる
―やって
洞窟内に、俺の決意が反響した。
まだ、職業は未開放のままだが、これから、この『覚醒者』という俺だけの役職で『平和な世界』を創ってやる!
そして、大切なものを奪ったあいつらへの『復讐』もしてやるんだ!
◆
この時、あるダンジョンでは、大量のハンターの命がある者によって奪われていた。
「この力、素晴らしいですね」
「こいつ、人間なのか魔族なのかわからねぇ!」
「あなたたちと一緒にしないでください。醜い人間どもは、全て殺す……」
―シャキン!
「リーダー! あいつ、強すぎます!」
「うるさい! 相手は、たった一体だ! ひるまず戦え!」
「「「おう!」」」
―シャキン!
―シャキンシャキン
―シャキンシャキンシャキン!
「ぐっ、こ、こいつは、何者、なん、だ……」
―グサッ
「ぐはっ! ……」
「ハハハ! 切るって楽しいなぁ!」
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