第3話 死闘! ヘルバーン四天王!


 次のフロアの間に休息スペースがあった。ドリンクバーかみ用意されている。これが魔王ヘルバーンの力かと俺たちコロポックル先輩救助パーティは戦慄した。とりあえず使えるものは使っておこうとドリンクバーをありがたく利用することにした。

「狩野さん、狩野さん」

「野田くん、どうしたんですか?」

「お絵描き魔術って何?」

 俺はお絵描き魔術とは何かを聞いてみた。俺たちのサークルが魔術サークルと会話する機会は殆どなかったので会話できるときは会話したほうがいいかなと思ったからだ。

「お絵描き魔術は自らの内部にあるイデアから生み出されたパトスをイラストの形で具現化し使役する高等魔術です。神絵師レベルにお絵描き魔術を極めれば異世界を一つ創造することも不可能ではないと言われています」

「なんかよくわからないけど凄い魔術であることがわかった」

 ここで俺は本題に入った。

「狩野さん、よかったらハロウィンパーティのポスターのイラストを描いてほしいんだけど」

「お絵描き魔術の向上に繋がりますので引き受けましょう……あ、もちろん報酬もそれなりのものを頂きますよ?」

 俺はハロウィンパーティのポスターのイラスト担当を確保したのであった。


◆◆◆◆◆


 休憩を済ませ気力体力を充実させた俺たちは次のフロアに突入した。そこは書庫の常識を逸脱したジャングルだった。あまりの状況に俺たちは絶句した。そんな俺たちをあざ笑うように館内アナウンスが鳴り響いた!

『コロポックル先輩救助チームの皆さん。このフロアにやってきたのはミノタウロスを倒したようだね。ボクはヘルバーン四天王の一人……ドリアード。ボクのもとにたどり着いたら次のフロアに行く鍵をあげるよ。ボクは大木にいるから気をつけて向かうんだよ』

 そう言ってドリアードのアナウンスは途切れた。俺たちの視界の先には世界樹のように大きな大木がある。あそこに向かって進めばいいらしい。

「目指すはあの大樹だ!」

 俺たちはドリアードのいる場所に向けて攻略を開示した!


◆◆◆◆◆


 ジャングルの中は鳥の声が賑やかにさえずっていてうるさい。俺たちコロポックル先輩救助チームはジャングルの地形に苦しみながら大木に向かって歩いていた。

「ミノタウルスの迷宮とどっこいの複雑さだぜ」

 俺は思わず複雑さに愚痴をこぼした。その様子をクーデリカはふよふよと浮遊しながら散歩気分についていった。まったく幽霊は気楽な身分だぜ。

 そう思った俺の足元が何かを踏んだ感触をした。これは木の枝か? そう思うまもなくどこならともなく泣き声が響き渡った!しまった、シュリーカーだ!シュリーカーの泣き声に反応して森に住む獣が次々と集まってきた!

「こうなったら僕が悪魔祓いの技を見せつけてあげますよ」

「田沼くん、森の野生動物相手に悪魔祓いが通じるのかね」

 俺は訝しんだ。

「見ていてください。フラッシュバン!」

 そう言って田沼くんは閃光手榴弾を獣に向けて投げつけた! 閃光が迸り、獣が怯んだ!

「今のうちに強行突破です!」

 俺は走って危険地帯を通り抜けた!


 命からがら獣の群れから逃げてきた俺たちはどこかの木陰で一息をつくことにした。

「なぁ、田沼くん」

「何でしょうか?」

「どうして、閃光手榴弾を持っているんだ?」

「悪魔は光に弱いですから」

 俺は疲労困憊でツッコミを入れる気力もなかった。ドリアードが待っている大木はすぐそこまで迫ってきた。この分だとゆっくり体力を回復してから歩けばすぐに到着するだろう。今は体力を解決することが先決だ。


◆◆◆◆◆


 数十分後、俺たちコロポックル先輩救助チームはあの大木にたどり着いた。

「よくたどり着いたね……コロポックル先輩救助チーム。約束通り次のフロアの扉を開ける鍵をあげよう。でも気をつけて、次のフロアにいる四天王は強力な力を持っているよ」

 ドリアードはそう言ってすんなりと次のフロアに通じる扉を開ける鍵を渡してくれた。

「何か罠があるんじゃないだろうな」

 俺は訝しげな視線をドリアードに向けてみた。

「野田さん、特に罠の存在はなさそうですよ。ドリアードの心を読んでみましたが特に裏はなさそうでした」

 田沼くんがいつの間にかドリアードを読心していた。悪魔祓いって凄い(つきなみな表現)。かくして俺たちはドリアードと別れ次のフロアは足を運ぶのであった。

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