第11話(2) チョコレート
少しの時間ティータイムを楽しんだ私達は、当初の目的を果たすためキッチンに二人
「本日はご指導お願いします。水瀬先生」
「こちらこそよろしくお願いします」
キッチンの前に並んで立つと、互いに頭を下げ、そして顔を見合わせ笑う。
そこから、私によるお料理教室が始まる。
と言っても、三分クッキング並に簡単な工程、なのだが。
今日使うのは、板チョコ、生クリーム、ココアパウダー、クッキングシート、
まずは、クッキングシートの上に並べた板チョコを細かく
次に、生クリームを入れた鍋を中火に掛け、
火を切り、鍋の中に細かく刻んだチョコレートを一気に流し入れ、湯気が収まるのを待つ。
湯気が収まったら、鍋の中身を泡立て器で完全に溶けるまでかき混ぜる。
その後、クッキングシートを
「後はそれを冷凍庫に一時間入れて、冷えた物を好みの大きさにカットし、最後にココアパウダーをまぶしたら完成です。というわけで、一時間待ちます」
難しい事は何一つしていないのだから、当たり前と言えば当たり前だが。
これからまだ必要となる、包丁とココアパウダー以外の物をとりあえず片付ける。私が鍋を洗い、その間に菊池先輩が他の物をしまう。ボウルと泡立て器は作業中にすでに私が洗っておいたので、後はしまうだけの状態になっていた。
「ごめんなさいね、洗い物までさせて」
「いえ、嫌いじゃないですから、こういうの」
嘘ではない。洗い物はむしろ好きだ。分かりやすい結果がすぐに出るし、何より
「あ、そうだ。水瀬さん、私のコレクション見る? 前に気になるって言ってたよね?」
話の流れを変えるためか、菊池先輩が
こういうところは、本当に
「はい。
断る理由もないため、私はそれに対し力強く
「じゃあ、こっちこっち」
その背中を私はすぐに追い掛ける。
部屋の広さは私の部屋と同じくらい、ダイニングキッチンよりかは広い。
内装の中で最初に目が付くのは、やはりロフトタイプのベッドだろう。それが部屋の奥で、下に置かれたソファーと共に確かな存在感を放っていた。
そして――
「
部屋に入って最初に目を引くのはベッドの方だが、もっとも目を引くのは本棚とショーケースの方だ(……もっともなのに二つあるという、細かいツッコミはなしの方向で)。
大きめの
本棚を見るとその人の人となりが分かるというが、ショーケースも似たようなものだろう。
いや、私も嫌いではないけど。
「小柄な子が好きなんですね」
ショタ好きという表現は、この場合適切ではないだろう。その名称に分類されるものも少なくないが、あくまでもそれは一面的な要素で、全体を見渡した上で思い浮かぶ感想はやはり小柄な子が多いなというものだった。
そもそも、ショタの定義も私はよく分かっていない。ロリや
「うーん。意識してるわけじゃないんだけどね。自然とそうなるというか」
その気持ちは私にも分かる。◯◯だから好きになったのではなく、好きになったキャラクターが結果的に◯◯だったのだ。
「水瀬さんは、今期誰推しなの?」
「え? 今期ですか?」
新しいクールが始まって約一ヶ月。すでにほとんどのアニメで、五話ないし六話が放映された。ここまで来ると最後まで視聴するものとしないものがはっきりし、自分の中の順位も大体決まり始める。
とはいえ、一番か……。
「うーん。難しいですけど――」
少し考えた
「あー。確かに綺麗だし格好いいし、時々可愛いもんね」
「そうなんですよ。そのギャップがまた」
私が
あれ? この説明、どこかで……。あっ。ソフィアちゃん。
よくよく考えてみたら、前のクールのお気に入りはクールなツンデレお嬢様、その前は
結局、二次元でも三次元でも私の好みは同じという事か。
なんだかそれって、ソフィアちゃん本人にバレたら凄く恥ずかしいような……。
いや、今更か。この手の話も、ソフィアちゃん相手に
あー。気付かなければ良かった。明日からどんな顔してソフィアちゃんと会えば……。
「水瀬さん?」
「はっ」
菊池先輩に名前を呼ばれ、我に返る。
いけないいけない。ショックのあまり、思考がどこかにトリップしていた。人といる時は気を付けないと。
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