第二章 Silent night
第5話(1) 予定
終業式後のホームルームが終わり、クラスが一斉に動き出す。
今日から、というか、今から冬休み。部活に入っていない私なんかは二週間以上学校に来なくていいという事で、もうワクワクと開放感が凄かった。
「いお」
「あ、うん」
呼び掛けに応じ立ち上がると、私は
教室を出てから数歩行ったところで、私はソフィアちゃんの隣に並んだ。
「今日はいお、バイトなのよね?」
「うん。でも、五時からだから、三時くらいまでなら付き合えるかな」
今日は木曜日。バイトのある曜日だ。
冬休みも変わらずバイトはある。なので私の場合、完全にお休みという感じではない。しかし、日曜日だけは二回共お休みにしてもらえた。ダメ元で店長に話をしてみたところ、意外にもすんなりその要望が通ったのだ。
次の日曜日は、なんと言ってもクリスマス。日本ではイブの方が重要とはいえ、その翌日だ、特に朝はゆっくりまったりしたい。
「そう言えば海外では、クリスマスは恋人より家族と過ごす方が主流らしいけど、ソフィアちゃん的にはどうなの?」
ふいに頭に思い浮かんだ疑問を、私はソフィアちゃんにぶつけてみる。
聞きかじった知識だが、海外のクリスマスはどちらかと言うと日本の正月に近いようだ。お店や交通機関も閉まり、この時ばかりはと皆が一斉に休む。だから、クリスマスの辺りに海外旅行を計画している人は注意が必要、との事。
「どうって……。お父さんはそもそも日本生まれ日本育ちだし、おばあちゃんも日本での生活の方が長いから……」
その辺りは、私と同じ認識という事か。
「晩御飯は? ウチはチキンとケーキが付きものだったけど」
「私の家もそんな感じかな。七面鳥は見た事すらないわ」
そこも同じ、と。
日本で七面鳥が出る家は
これもサンタクロースの衣装と同じく売る側の作戦にまんまと日本人が乗せられた結果らしいのだが、まぁ今となっては何がきっかけかなんてどうでもいい。クリスマスに食べるチキンは
「明後日は何時に来る予定なの?」
「お昼食べてからだから、三時過ぎ? 夜は私がいないから、今年ウチはお昼にクリスマスやっちゃうんだって」
ソフィアちゃんの質問に、私はそう答える。
つまりその日私は、昼と夜、二回チキンとケーキを食べる事になるわけだ。……色々な意味でイブは、私にとって重い一日になりそうである。
「ねぇ、だったら、明後日は
「え? 切峰駅? 私は別にいいけど……。でも、なんで?」
切峰駅は私からしてみれば、乗った駅から一つ先の駅なので手間としたら途中下車するくらい。一方ソフィアちゃんは、本来乗らなくてもいい電車に揺られ六駅移動するわけだから、どちらが手間かと言ったら断然後者だろう。
「切峰駅とその周辺が、この時期イルミネーションで
「なるほど」
それをイブに一緒に見たいわけだ。
「ダメ?」
「いや、断る理由ないし。むしろ、こっちからお願いしたいくらいだよ」
クリスマス当日に出掛ける予定は立てていたが、イブは夕食以外ノープラン、私としてはただ
「じゃあ、五時前に切峰駅に集合って感じかな?」
イルミネーションの点灯は、ある程度陽が落ちてからだろうし。
「うーん。もう少し早くてもいいかも。その間にちょっとお茶しない?」
「なら、四時?」
「そうね。うん。そのぐらいの時間がいいと思う」
というわけで、明後日は切峰駅に四時に集合する事が決まった。
後で、当日の電車を調べておこう。
それはそれとして――
「これからどうしようか?」
現在の時刻は昼前、まだ三時間以上の余裕がある。
「どこかでお昼食べてく? ファミレスとか」
「いいね、ファミレス。行こ行こ」
ソフィアちゃんの提案に、私は二つ返事で乗っ掛かる。
別に場所はどこでも良かった。ソフィアちゃんと一緒にいけるなら……。
「じゃあ、決まり。いおは何食べる?」
「えー。なんだろう……」
こうして私の、いや私達の冬休みは始まった。
冬休みは夏休みより短い。その中で私は、宿題とバイトをこなした上でソフィアちゃんとの時間も楽しまなければいけない。特に三つ目はマスト案件、絶対
クリスマスに
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