第一章 想いを形に
第1話(1) バイト
バイトを始めておよそ|ひと月が
ようやくバイトのある生活にも慣れ、
基本私のシフトは日・火・木。金・土だけ休みの希望を出した結果こうなった。連続する部分がないのは、店長から新人への配慮だろうか。なんにせよ、最初の内は助かる。
まだまだミスはするが、慌てる事は少なくなってきた。落ち着いてやれば大抵の事はなんとかなる。まぁ、そのなんとかには、先輩に丸投げするというのも含まれているが。
「
木曜日。更衣室で帰り
菊池先輩――菊池
髪は金髪ショート。整った顔立ちと無数のピアスも相まって、その
身長は私よりやや高い程度。百六十の後半といったところだろう。
そういう意味では、少しソフィアちゃんに似ているかも。顔立ちは全然似ていないが。
「いないです。いた試しもありません」
菊池先輩の質問に答えながら私は、
「えー。水瀬さん可愛いからモテそうなのに意外」
「ははは……」
菊池先輩の言葉に、思わず苦笑が
根拠のない
「そういう菊池先輩はどうなんですか?」
別に人の
「私? 私はね……いるよ」
「え? あ、へー」
なんだ、私の話に格好付けて自分の話を聞いてもらいたかっただけか。だとしたら、むしろ好都合。このまま話を合わせて、菊池先輩に気持ちよく
「どんな人なんですか?」
なので私は、積極的に菊池先輩の話に乗っかる。
「いわゆるイケメンではないかな。でも、男らしくて頼りになる、みたいな?」
「へー」
菊池先輩が
「写真とかは?」
「あー。そういうの、嫌いな人だから」
「そう、なんですね」
私も写真は好きな方ではないので、気持ちは分かる。まぁ、誰かさんのお
菊池先輩を待って、二人で更衣室を後にする。そしてそのまま、一緒に
向かう先はお店の裏口。従業員はそこから出入りをしている。
「彼氏さんとはどこで知り合ったんですか?」
「高校」
「同級生」
「んにゃ、年上」
て事は、先輩か。
先輩。いい響きだ。漫画やアニメで主人公が年下の女の子からそう呼ばれているのを見ると、思わずキュンと来てしまう。とはいえ、私は別段年下好きというわけではない。年上、同い年、なんでもこざれのオールマイティーだ。
「いいですね。同じ学校に恋人がいるって」
まぁ、私も実はそうなのだが、ここではあえてそれを脇に置かせてもらう。
「あー。けど、私達隠れて付き合ってたから」
「え? 隠れて……?」
何か事情があったのだろうか。あるいは、単に冷やかせるのが嫌だったとか? 気になるけど、深追いは良くない。この場は聞き流そう。
「付き合い始めたきっかけはなんだったんですか?」
「私から告白してそれで」
「へー」
まぁ、菊池先輩なら、告白されるよりする方が
「告白したら、即OKって感じですか?」
「いや、何度も断られて……十回近くはしたかな。結局、向こうが根負けして」
当時の事を思い出したのか、菊池先輩が苦笑を漏らす。
「え? 菊池先輩でも断られる事あるんですね」
意外というか、なんというか。
「そりゃあるよ。私をなんだと思ってるの?」
冗談めかした口調でそう言いながら、菊池先輩が笑う。
「すみません。そんな姿、想像出来なくて」
美人で明るい菊池先輩からの告白を、何度も断る
そう言えば、菊池先輩は私の通う高校の出身者と聞いている。(その事もあって、打ち
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