第22話(1) 幸せ
駐車場
真っ直ぐ伸びた道の先には
当然私達は左を選択。その先の道も進み、池へと
「ホント、大きいわね」
「
「この池も、水を抜いて掃除したりするのかしら?」
「するんじゃない? さすがにずっと放置って事はないでしょ」
池は何もしなければ汚れる一方なので、定期的な整備が必要だ。生き物を一時保護し、水を抜き、底に
「コイって、何か落とすとエサだと思って集まってくるのよね」
「……」
「やらないわよ」
私の反応に、ソフィアちゃんが心外と言わんばかりの表情でこちらを見る。
「何も言ってないけど?」
「やらないから」
「そろそろ行こっか」
私はそう言うと、ソフィアちゃんの返事を待たず一人歩き出した。
すぐに隣にソフィアちゃんが並ぶ。
池に
――なんて、考えるまでもない。
目的の場所は坂を上った先にあるので、私達は迷わず向かって左斜めの道を選択。
中央にある鳥籠の中には
その邪魔にならないように、私達も少し離れた場所から孔雀を見る。
「改めて考えても、普通の公園に孔雀がいるって異常よね」
「もっと広い公園なら分からないでもないけど、竜谷公園はそれなりの広さだしホント
地元の私でも、孔雀がここにいる
「孔雀って空飛べるんだっけ?」
「確か飛べるはず」
実際に飛んでいるところを見た事はないが、動物園から飛んで脱走したというニュースの方は見た事がある。
「じゃあ、この鳥籠みたいなデザインも、ちゃんと意味があるのね」
「まぁ、見た目も考慮して、だとは思うけど」
それでもこの鳥籠が、上を
「メス二羽にオス一羽……親子? かしら」
「だとしたら、ウチと同じ家族構成だね」
「ウチもそう」
父母娘。そして、祖父母の同居なし。私とソフィアちゃんの家族構成は、実は共通している。
「孔雀の世界でも、お父さんの肩身が狭いとかあるのかしら」
「どうかな。でも、少なくとも住居は狭そう」
「おー」
言いながら、ソフィアちゃんが私に向かって拍手をしてくる。
恥ずかしい。自分で
孔雀に別れを告げ、私達は階段を使って更に上に登る。
すると、開けた場所に出た。
隅にベンチがいくつかあるだけのだだ広い空間。今はその中央で、子供が二人追いかけっこをしている。
ベンチの一つに、二人並んで腰を下ろす。
その瞬間、思わず「ふー」という声が私の口から漏れ出た。
「疲れた?」
「少し」
最寄り駅からここまで少し距離がある上に、園内の道には坂や階段といった起伏のあるものも多い。さすがにへばる事はないが、いい運動になった事は確かだ。
「はい」
そう言って手渡されたのは、温かいお茶の入ったペットボトルだった。
「ありがとう」
受け取ったそれを、私は
温かいお茶が体に行き渡り、私の体と心を同時に
ほっと息を吐くとは、まさにこういう事を言うのだろう。ホットだ――いや、なんでもない。
私が
二人の間に蓋が取られた弁当箱と、
「食べましょ」
ソフィアちゃんのその言葉を合図に、私達はシートで手を拭き、食事を開始する。
弁当箱の中にぎっしり詰まるように入っているのは、サンドイッチ。主に作ったのはソフィアちゃんで、私も少しばかりお手伝いをさせてもらった。
「いただきます」
手を合わせ、サンドイッチに手を伸ばす。そして、中身が
「うん。美味しい」
シンプルな食材、シンプルな味付け、シンプルな工程ながら、料理としてしっかり完結しており、文句の付けようのない美味しさだった。
まぁ、ソフィアちゃんが作った物という
「良かった」
私の反応を見てから、ソフィアちゃんもサンドイッチを自身の口へと運ぶ。
「うん。美味しい」
私と同じ事を言い、ソフィアちゃんが口元を緩める。
それを見て私は、
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