⁂2(2) 準備
翌日の昼休み。
この中でお弁当組は私と紗良紗と静香の三人。朋絵と蒼生は登校途中にコンビニに寄って、サンドイッチ等の軽食を買ってきている。
「ハロウィンパーティどうする?」
食事の合間、紗良紗がそんなぼんやりとした問い掛けを誰にでもなく投げ掛ける。
「どうするって、形式の話?」
静香がそれを具体的なものへと変換し、紗良紗に聞き返す。
こういう時、話の道筋を作ったり
「そうそう。ケーシキの話」
形式の発音がどうにも怪しかったが、まぁ、そこはいいだろう。
「立つか座るか。後は、プログラム的なものを作るか作らないかって感じ?」
更に私が、紗良紗の質問をブラッシュアップしてみんなに振る。
「立食でいいんじゃない? 座って大人しくって感じでもないでしょ」と朋絵が言うと、
「食べて話してわいわい出来れば私的にはいいかな」と蒼生が続く。
「だね。場所が場所だし、立食形式でお喋りメインって感じでいいかもね」
特に反対する要素もなかったため、私は二人の意見をそうまとめる。
「まぁ、コスプレしてる時点でハロウィンの目的は達してるわけだし、私もそれでいいと思う」
「異議なーし」
静香と紗良紗が賛同の意を示した事で、パーティの方向性は早々に決着をみせる。
――と、そう言えば、みんなに前
「実はその、みんなに言わないといけない事があって……」
「なになに?」
「どうしたん?」
紗良紗と蒼生が代表して、私に話の続きを
「実は小学生の女の子の一人、パーティに参加させたくて……」
「小学生の?」と紗良紗が小首を
「女の子?」と蒼生がそれを同じく首を
他の二人も声にこそ出さないものの、反応は似たようなものだった。
「パーティの会場に使わせてもらうお店ってのが私の……知り合いのお店で、女の子はそのお店の子なんだけど……」
自分で言っていてあまり説明になっていないなと、反省を通り越し
こんなので納得する人なんて――
「まっ、すでに結構な大
私の予想に反し、静香がそんな事を口にする。
「
「パーティーなんだから、人が多い方が楽しいじゃん?」
「その子って、どんな感じの子なの? 写真ある?」
蒼生と紗良紗も特に言う事はないらしく、美咲ちゃんの参加にむしろ乗り気なようだ。
「写真か……。初めてお店訪れた時に撮ったのが……」
初めてと言っても、夏祭り以来初めてという意味だが。
スマホを操作し、写真を画面に表示させる。そして、その状態のスマホを机の上に置く。
途端、一斉に四人が私のスマホを
「可愛い……」
「え? 待って。画面の中の顔面偏差値エグっ」
「あれ? 松嶋さんもいる」
「わぁー。お人形さんみたい」
四人の反応はそれぞれ違ったが、
なぜだろう。全然関係ないのに、美咲ちゃんが褒められている事が、自分の事のように――いや、それ以上に
娘を褒められた時の母親の気分とは、もしかしたらこういうものなのかもしれない。
……まぁ、多分違うけど。
「名前は? なんて言うの?」と紗良紗が聞いてくる。
「美咲ちゃん。美しいに咲くって書いて美咲」
「へー。名前も可愛いんだ」
「そう。見た目だけじゃなくて、名前も可愛いのよ」
紗良紗の言葉に、私は激しく同意する。
「こりゃ、相当入れ込んでんなぁ」
横からそんな朋絵の声が聞こえてきたが、私は右から左に聞き流す。
自分が美咲ちゃんに入れ込んでいる事など、今更言われなくとも分かっている。しかし、可愛い上に懐かれれば誰でもこうなるだろう。何も私が特別なわけではない。
「でもさー、小学生の女の子が知らない人ばかりのパーティに参加するわけでしょ? 緊張しないのかな?」
ふと蒼生が、呟くようにそんな事を言う。
確かに、その懸念はもっともだ。私自身、小学生の頃は知らない大人が怖かった。親戚の集まりでさえ緊張したものだ。
しかし――
「それは、大丈夫じゃないかな。楓とはよく会ってるし、
特に、水瀬さんには割と懐いていたイメージがある。二人は雰囲気もどことなく似ている感じがするし、もしかしたら波長が合うのかもしれない。
「え? 水瀬さんと早坂さんもそのお店の常連って事?」
「あー。うん。そうだね」
蒼生の質問に、私は一瞬思考を働かせた後、口元に笑みを作りそう答える。
水瀬さん達がお店によく通っている事と、美咲ちゃんと面識がある事は全く別の話なのだが、まぁそこをあえて正す必要もないだろう。
とにもかくにも、これで決めなければいけない事は決め、伝えないければならない事は伝えた。後は、
私は日頃から勉強しているので別に慌てる事はないが、紗良紗と蒼生は……。とはいえ、紗良紗と蒼生では慌てる理由が全然違うんだけど。前者は平均点、後者は赤点、どちらがヤバいかは言うまでもないだろう。
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