第三章 赤い糸
第11話(1) 相談
最近、ソフィアちゃんの言動に違和感を覚える事が増えた。
それはどれも
「いお、お昼行こ」
「あ、うん」
立ち上がり
単純に、仲が深まってきたからという認識でいいのだろうか。私としては、あまりにも急な距離の詰め方(物理)に戸惑うばかりだ。
まぁ、まだ構内で手を繋いでこないだけマシか。
ウチのクラスにはいないが、仲のいい女子同士だと当たり前のようにそういうスキンシップを人前で堂々と取るらしい。
階段をいくつか登り、いつもの場所にやってくる。
屋上に続く階段、そこに並んで腰を下ろし、私達は昼食を食べ始める。
この時もソフィアちゃんは私の真横に座り、その距離は
両親と離れて一人暮らしになった反動が、遅れてやってきたのだろうか。
まぁ、別に嫌なわけではないのでいいのだが、慣れない距離感にどうしても戸惑ってしまう。
「いおって、日頃アクセ付けたりしないの?」
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ソフィアちゃんはいつもの調子でそう私に話を振ってくる。
「そういうのはあんまり……」
似合わないというのもあるけど、付ける習慣がないため、そもそも付けようという気が起きないのだ。
「
「うーん……」
いいか悪いかで言ったらいいかもしれないが、あえて付けるかと言ったら……。
「というか、どうして急にアクセの話に?」
別にどんな話題を振ろうとソフィアちゃんの自由なのだが、日頃しない話をする時は何かきっかけや裏がありそうだ。
「実は――」
とソフィアちゃんが
やはり、何かあったか。
「ペアリングを作りたいな、なんて」
「ペアリング?」
って、あの? カップルや夫婦が一緒に付けるというあのペアリングの事?
「どうかな?」
私の様子を
「そうだな……」
ペアリングという事は、つまり指輪。指輪か……。
今までもいくつかお揃いの物はあったが、指輪となるとそのハードルは格段に上がる。ドイツとドイツ村、中国と中国地方ぐらい違う。
ちなみに、私はパスポートを持っていないので、海外に行くならまずそこからだ。そして、どうせ行くなら、ソフィアちゃんに関係のあるイギリスに行きたい。
……って、一体なんの話だ。話が
話を戻そう。
指輪。そう、確か指輪の話だった。指輪はハードルが高いという話だ。そういう意味では、ネックレスやピアスの方がまだ……。
「ほら、女性同士で付けてる人達もそれなりにいるし、そんな重たい感じじゃなくて、カジュアル? みたいな? とにかく、そういう感じのやつなんだけど……」
私があまり乗り気じゃない事を
どうやら、どうしても私とお揃いの指輪をしたいらしい。
「まぁ、そういう事なら……」
その熱意に
確かに、特別仲のいい女の子同士ならペアリングも有りらしいし、そこまで過剰に反応する事でもないのかもしれない。
「ところで、ペアリングっていくらぐらいするの?」
何はともあれ、作る方向で話を進めるなら、値段の確認は大切だ。ゼロが四つ以上並ぶようだったら、さすがに一度持ち帰らせてもらわないと返答は出来ない。何せ私は、バイトもしていない、ただの女子高生なのだから。
「そりゃ、安い物から高い物までピンキリよ。でも、私達は高校生だし、一人辺り七・八千円くらいでいいんじゃないかしら」
七・八千円か。まぁ、それくらいなら、ギリギリなんとか。両方の祖父母から
「本当は私が全額出してもいいんだけど――」
「それはちょっと」
誕生日でもなんでもないのに、そんな
「いおならそう言うと思った。それに、お金を出し合って買った方が、二人で一緒に買った感が出て、なんとなくいいかなって」
カップルや夫婦であれば、どちらか一方がお金を出すというのもプレゼント的な意味もあっていいのかもしれないが、友人同士でそれをするのはなんか違う気がする。
「今度の土曜日はどう?」
「別にいいけど。お店の目星はもう付いてるの?」
「当たり前でしょ。私がなんの下調べもせずにこんな話すると思う?」
「……」
冷静に考えると、なんとなく話を切り出されるよりしっかりと下調べをされていた方がマジっぽくてなんだか……いや、なんでもない。こういう事は、深く考えたらダメだ。単純にソフィアちゃんは用意周到――も違うか。まるで、ソフィアちゃんが悪さを
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