幕間
SS4 衣替え(第4話数日後のお話)
九月も終盤に差し掛かり、夏服を着る生徒はすっかり少数派と化していた。四人に一人といったところだろうか。いるにはいるが、なんとなく肩身が狭いというかなんというか……。
かくいう私もその少数派の一員で、未だに衣替えを果たせずにいた。
いや別に、とっとと替えればいいのだが、いつにしよういつにしようと悩んでいる内に、いつの間にかここまで来てしまった。もうこうなると、全生徒が完全に移行する十月一日まで待ってやろうかという、訳の分からない意地みたいなものすら芽生え始めてくる。
さて、どうしたものか。
教室内をちらりと見渡しながら自分の席までやってきた私は、ソフィアちゃんと
なんともなしに、後ろの席に目をやる。
ソフィアちゃんも私同様、まだ夏服だった。
半
「何? じろじろと見て」
さり気なく見ていたつもりだったが、当人にはバレバレだったようだ。
「いや、今日もソフィアちゃんは
「そう? ありがとう。でも、いおも私に負けず劣らず可愛いわよ」
「ありがとう……」
ジョーク交じりの
「で、本当は?」
「……」
私の浅はかな
「いやー、ソフィアちゃんの夏服もそろそろ見納めだなって」
「あぁ」
「夏服の人、大分少なくなってきたしね」
教室内をちらりと見渡し、ソフィアちゃんがそんな事を言う。
「ソフィアちゃんはいつ衣替えするの?」
「いおが替えたらにしようかな」
「えー」
あわよくばソフィアちゃんにその判断を
「じゃあ……明後日?」
明日だと準備が間に合わないかもしれないので、一日開けて――といった感じだ。
「明後日ね。了解。忘れず準備しておくわ」
私も、忘れないように今日の内に準備しておかなければ。試着で一度着たっきりなので、何も問題はないと思うが。
というか、待って。もしかしなくても、ソフィアちゃんの冬服バージョンって初お
「いおがまた、変な事考えてる」
「な、なんで?」
「顔、にやけてる」
言われ、自身の顔に触れてみるが、当然よく分からなかった。
「何考えてたの?」
「……ソフィアちゃんの冬服、どういう感じかなって」
「それでそんな顔になる?」
「……」
そんな顔とはどんな顔なのだろう? 今後のためにもこの目で一度見ておきたいような、見たくないような……。
「いおって、ホントに私の事好きよね」
そう言って、ソフィアちゃんが優しく
「……悪い?」
「別に、悪くないわよ。それ自体は
「……」
さらりとそんな
「あ、そうそう。衣替えした写真送って欲しいって、お母さんが」
「そっか。その前に引っ越しちゃったから」
ソフィアちゃんの両親は、先週の金曜日に福岡へと旅立った。当日私は早坂家に泊まりに行ったが、その時のソフィアちゃんはどこか寂しそうだった。
「じゃあ、明後日私が
「ありがとう。後はいおのワンショットとツーショットもお願いね」
「私のワンショット?」
ツーショットはまだ分からないでもない。けど、私のワンショットはどう考えても早坂家と無関係だろう。
「お母さんからの要望だから」
「へ? そうなの?」
なんでまた。
「お母さん、相当いおの事気に入ってるみたいよ」
「そうなんだ……」
まぁ、嫌われてはないとは思っていたが、相当気に入られているとまで言われると、なんだかむず
「私もいおの事、相当気に入ってるから」
「あ、はい……」
急に、なんのアピールなんだ? 困惑のあまり、思わず敬語になってしまったじゃないか。
ソフィアちゃんは、時々何考えているのか分からない時がある。
まぁ、ソフィアちゃんからしてみたら、お前が言うなって感じなのかもしれないが。
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