第15話(3) 練習
「一、二――」
ソフィアちゃんによるカウントが室内に響く。
本日十種目目の体幹トレーニング。腹筋四種類、背筋二種類、
マットに
動作はゆっくり
「十四、十五」
「ぶはー」
ようやく全てのトレーニングが終了し、私はそのままマットに寝転ぶ。
「本当はもう四種類はやりたいんだけど……」
その地獄の申し出に、私は慌てて首を横に振る。
「今日はこの辺りで勘弁してあげるわ」
そう言うとソフィアちゃんは、なぜか勝ち誇ったように「ふっ」と笑ってみせた。
「ソフィアちゃんは、こんなの毎日やってるの?」
「毎日、ではないわね。週二・三回? 気が向いたらって感じね」
「なるほど……」
毎日ではないにしても、これ以上のものを週二・三回か。それはなんというか、大変そうだ。
私なんて今日のでもう、体中が筋肉痛だった。無事なのは首と顔くらいか。この調子だと明日が怖い。ベッドから起き上がれなかったらどうしよう。
「泊まってく?」
そんな私の様子を見兼ねたのか、ソフィアちゃんがそう提案をしてくる。
「いや、準備してないし」
「パジャマや下着は私の使えばいいじゃない」
「……」
いいじゃないと言われても、物の準備だけじゃなくて心の準備も必要だし。それに、さすがに下着は……。
「あ、大丈夫。下着は新品があるから」
「うーん……」
なら……。でも……。
「とりあえず、お風呂でも入る?」
とソフィアちゃん。
お風呂に入っている間に、泊まるか泊まらないかを決めればいいという事だろうか?
「……」
それに対し、私は
疲れていたという事もあったが、どちらの回答を口にしてもこの場に
「待ってて、準備してくる」
その沈黙を肯定と
一人部屋に取り残される私。
「……」
黙って、正面に広がる天井を見つめる。
体を動かす事自体は、別に久しぶりでもなんでもない。体育でもたまに行っている家での運動でも、体は動かしている。けど、人の考えたメニューで行うトレーニングには、それらでは感じられない疲労感があった。
自分の発想でなかったり自分でコントロール出来なかったり、そんなところがより疲れる要因、なのだろう。
それにしても、疲れたなー。出来る事なら、このまま寝てしまいたいくらいだ。さすがにそれは許されないので、気合で意識は保つけど。
ガチャという音がして扉が開く。そして、ソフィアちゃんが顔を出した。
「いお、まだその態勢だったの?」
驚いたような
その様子にバツの悪さを感じた私は、
「お風呂
言葉の途中、何かがこちら目掛けて
「わぁ」
私は慌ててそれをキャッチする。包装された小さなまんじゅうだった。大きさ的に一つ一つ売られている物とうより、箱に何個か詰められた物の一つ、だろう。
「それでも食べて待ってて」
よく見ると、ソフィアちゃんの手にも同じ物が握られていた。
一人一つずつという事らしい。
「なんでおまんじゅう?」
それは質問というより
「疲れた時は甘い物っていうのと、空腹でお風呂入るのは良くないから」
歩いて先程までいたもう一つのマットの位置まで戻りながら、ソフィアちゃんが私の疑問に答える。
「あー」
血糖値がうんたらかんたらとか言う……。ちなみに、旅館の部屋に甘い物が置かれているのも、同じ理由からである。
包みを開き、まんじゅうに
小さいとはいえ、一口でいくにはまんじゅうは
なんともなしに視線をやると、ソフィアちゃんもマットの上に座り、私と同じくまんじゅうに被りついていた。
ん? そういえば――とふと思う。
なんかお風呂に入る流れにいつの間にかなっているけど、この場合お風呂って一人で入るんだよね? ソフィアちゃんの家のお風呂がどのくらいの大きさか知らないけど、普通の家のお風呂に二人で入るなんて……ね?
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