第12話(1) 髪飾り
一口に公園と言っても、その大きさや用途は様々だ。
住宅街にある子供が遊ぶような小さな公園、市に一つ二つあれば十分な子供の遊び場としての用途に加え園内の散策やイベント会場としての使用を目的とした中くらいの公園、近隣に一つあるかないかの規模の何らかコンセプトを有した大きな公園。
今回私達が訪れた公園は、その三つの分け方だと中くらいのものに
園内に入ってすぐの所に、
変わり種の物から地域制のある物まで多種多様な飲食を扱う屋台が、まるで
気のせい、ではないだろう。売っている物の違いもあるが、どちらかと言うと売っている人の違い、のような気がする。上手く説明出来ないけど、多分そんな感じだ。
それにしても――
「すみません」
人にぶつかり
それにしても、人が多い。先程の車道の比ではない。
人数もそうだが、敷地内という事もあって密集率が高いのだろう。実際、園内に入ってすぐ人込みに
「大丈夫?」
背中に手が
隣を見ると、心配そうな表情を浮かべたソフィアちゃんの顔があった。
「うん。大丈夫」
私はそれに笑顔で
「人が多いし、それぞれ一種類ずつ買って隅で食べましょうか」
「だね」
あまりフラフラしていたら、また誰かとぶつかってしまいそうだ。
「じゃあ、あの辺りに集合って事で」
そう言ってソフィアちゃんが指差したのは、芝生を囲う石垣だった。高さは私の腰ぐらいなので、座るのにちょうど良さそうだ。
ソフィアちゃんと別れ、一人付近を探索する。
綿あめ・チョコバナナと甘い物が続いたし、次はやはりご飯系だろうか。
とは言ったものの、このエリアの屋台はそもそもご飯系の方が多い。甘い物もあるにはあるのだが、その数は全体の十分の一にも満たない。
「あっ」
そんな中、興味を
名前は知っていたけど食べた事はまだない、ご当地限定のB級グルメ。値段もお手頃だし、何より手に持って食べられるのがいい。
私は迷わずその列に並んだ。
数分後、石垣に腰掛け待っていた私の元に、ソフィアちゃんがやってきた。その手には、プラスチックのパックが握られていた。
「いおの方が早かったのね」
「うん。割とすぐ決まったから」
そう言って私は、隣に座ったソフィアちゃんに両手に一つずつ持っていた一方を渡す。
パックを脇に置き、ソフィアちゃんが紙の包みに入ったそれを受け取る。
「何これ? せんべい?」
手の中の物をまじまじと見ながら、ソフィアちゃんがそんな事を言う。
「ソフィアちゃん知らないの? たませんだよ、それ」
「あー。これが」
見た目こそ知らなかったものの、名前には聞き覚えがあったらしい。
かくいう私も、実物をこうしてこの目で見るのは初めてだったりするのだが。
たませんは、名前の通り卵(目玉焼きもしくはスクランブルエッグ)をせんべいに乗せて焼き、二つ折りにした食べ物である。
トッピングはお店によっては様々なものが存在するらしいが、屋台にあったのはノーマルとスペシャルの二種類のみだった。
スペシャルという言葉に心惹かれない事もなかったが、初めてはやはりオーソドックスな物という事で今回はノーマルを二つ購入した。
まずは一口とばかりに、ソフィアちゃんがたませんの上の部分を小さく
「ん! なるほど。こういう味か……」
食べながらソフィアちゃんが、いいんだか悪いんだかよく分からない感想を口にする。
「どう、かな?」
やはりそこは自分が買ってきた物、口に合う合わないは当然気になる。
「すごっい美味しいというよりかは、落ち着く味って感じ? 私は好きよ、この味」
「そう……」
良かった。
心の中でほっと胸を
最初にせんべいの味とパリッとした食感が来た後、中にあった具材の味と卵特有の柔らかな食感が遅れてやってくる。
なるほど。確かに、落ち着く味だ。初めて食べる味のはずなのに、不思議と故郷を思い出させる。お父さんとお母さん、今頃何をしているだろうか……。まぁ、数時間前にあったばかりだし、また数時間後に顔を合わすんだけどね。
卵以外の具材は青のりと桜えび。大きな味の変化はないがアクセントとしては十分で、味のみならず食感や風味にいいプラス要素を加えていた。
「ソフィアちゃんは何を買ってきたの?」
二口三口たませんを食べてから、私はそうソフィアちゃんに尋ねる。
「みだらしだんご」
「ん?」
「だから、みだらしだんご」
どうやら、私の聞き間違いではなかったようだ。
「向こうではそう言うのよ」
「へー」
パック越しに見えるそれらは、一見して私のよく知るみたらしだんごと大差ないように見えるのだが、果たして味の方は……。
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