第17話(2) デート?
水着を選んだ後、店を移動し今度はルームウェアを選ぶ。
そちらの方は、特に問題なくすんなり決まった。露出が少ないという事と、不特定多数の誰かに見せるわけではないというのが、その主な理由だろう。
そして、当初の目的を果たした私達は、二人である場所に向かった。
時刻は三時を少し回ったところ。甘い物を食べるには、ちょうどいい時間帯だ。
館内の一階には、パン屋やドーナツ屋といった手で持って食べられる、軽食を扱ったお店が集まったエリアが存在する。私達はその中の一つである、クレープ屋で商品を購入すると、近くのソファに並んで腰を下ろした。
全体を包んでいる紙の上部を開き、
甘っ。当たり前だが、この前食べたかき氷よりも顕著な甘さが、食べた瞬間口の中いっぱいに広がった。生地の柔らかさ、クリームの甘さ、そしてチョコバナナの甘さと
「この後、どうする?」
買わなければいけない物は買ったし別に帰ってもいいのだが、折角ショッピングモールに来たのだから、もう少し何かしていきたい気持ちもある。
「……。まだ時間も早いし、何か見てってもいいけど」
ソフィアちゃんも同じ気持ちらしく、クレープを飲み込んでからそんな事を言う。
何か。何か。何か、ね……。
「あ、個人的な事で申し訳ないけど、本屋寄ってもいいかな?」
ふと思い付き、私はソフィアちゃんにそう尋ねる。
「別にいいけど、何か買うの?」
「うーん。多分?」
「何それ」
私の
「あまり発売日とか気にしないタイプだから、油断してるといつの間にか何かしらの新刊が出てる時があるんだよね」
もちろん、大体この日と覚えている物もあるが、三分の二以上の購入物は店頭で見て初めて出ていた事に気付く。まぁ、あまりに買い過ぎていて、全部を把握しきれていないというのが正直なところなのだが。
「ふーん。そういうものなのね」
ソフィアちゃんがクレープに
「私も何か買おうかな」
「当てはあるの?」
「別に。ねぇ、最近のやつで、お
と言われても、候補が多過ぎてすぐには思い付かない。
「ジャンルは?」
「面白ければなんでも」
「なんでも……」
選択肢が無数にあって一見楽そうに思えるが、決め手に欠くため、こういうのは逆に選ぶのに苦労する。つまり、夕食時にお母さん方が感じるアレと同じだ。
……よし。ソフィアちゃんにお勧めする本は、実際に並んでいる物を見ながら考えよう。インスピレーションってやっぱり大事だし。決して考えがまとまらず、思考を先送りしたわけではない。うん。全然、一ミリたりともそんな事は思っていない。あー。クレープ美味しい。
「あ」
どこからか声が聞こえ、そちらを向くと、見知った二人組が立ち止まり私達を見ていた。
「水瀬さんと早坂さん。偶然ね」
「こんにちは」
こちらに歩み寄りながら、秋元さんと松嶋さんが私達にそう声をかけてきた。
「二人も買い物?」
ショッピングモールという事で、この建物内には色々な施設がある。歯医者、映画館、飲食店。そうなると、ここにいる理由は千差万別。買い物以外にも別の目的があるのかもしれない。
「ううん。買い物もするかもしれないけど、今日は映画を観に来たの」
「
そう言って秋元さんは、両手を広げるとわざとらしく渋々感を出してみせた。
「そんな事言って、
楓は松嶋さんの下の名前で、桜は秋元さんの下の名前だ。
二人が下の名前で呼び合うところを見るのは初めてなので、私は少し面食らう。
「まぁ、
「ほらー」
「二人って仲いいんだね」
その事が気になり、私は思わずそう口にしていた。
「私達幼なじみなの」
「腐れ縁ってやつよね」
松嶋さんの言葉に、秋元さんが追従する。
「桜とは幼稚園からずっと一緒なのよ」
「小さい頃はいつも私の後を付いてきて、さくらさくらって」
「いつの話をしてるのよ」
今の話を聞くだけでも、二人の付き合いの長さと仲の良さが伝わってくる。
「そういえば、二人は何してるの? もしかしてデート?」
話の流れがひと段落したところで、秋元さんがそうして、今度は私達の方に話の矛先を向けてくる。
「デートって……」
「そう。今度、いおの家におの泊りに行くからその準備がてら、お買い物デート中なの」
苦笑を
「「え?」」
まさか、そんな反応が返ってくるとは思っていなかったのか、秋元さんと松嶋さんは一瞬その動きを止め――
「やっぱり二人って……」
「そうだよ。私達の予想は間違ってなかったんだよ」
次の瞬間には二人で顔を寄せ合い、何やら小声でひそひそと話し始めた。
「もう。ソフィアちゃん」
「何よ。間違った事は言ってないでしょ」
間違った。うーん。間違ってはないのかな? そもそもデートに明確な定義は存在しないはずだし、今日のコレもデートと言っても
まぁ、仲のいい女の子同士なら、デートくらいするよね、きっと。
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