咎めたヒト

 全くもう、好奇心は人間の業とは言うけれども。


「甘い下調べだけで怪異に手を伸ばすのはいけないよ、少年」


 うぅん、と唸りながら寝具の中で丸まる少年を見下ろす。寝具横の勉強机には、もちろん2つの湯飲みが並んでいて。


「ヒトに対して好意的じゃない子もいるんだから」


 自身が生きていた時代には存在しなかった、床から離れた寝具にそっと腰かける。畳の上の寝具とは違いゆるく押し返してくるその寝具に驚くも、物珍しさとその触感に気を良くし、しばらくふかふかな寝具を堪能していた。


「君、仲間内では『怪異泣かせの狂人』って呼ばれてるの知ってたかい?」


 聞えているはずもないのに少年に向けて言葉を紡ぐ。少年はゆるく閉じた口元をもごもごと動かして、返事のような不明瞭な声を零した。餌を食む小動物のようなその仕草に頬が緩む。


「あんまり皆をいじめないであげてね。怖がりな子もいるんだ。不思議に首を突っ込むのもほどほどに」


 そう言って少年の頭を一撫ですると、その場を後にした。湯呑に入った水もお酒も、そのままに。

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