お泊まり会

「お、へデラは今日から復帰か! 大事なかったみたいで良かったよ」


 二人で歩いていたら教室に入る手前でリーフと鉢合わせ、声をかけられる。


「約半年間登校出来なかったんですよ!? 大怪我です!」


「ま、無事なら何でもいいんだよ! セビアも良かったな、お前たち仲良かったし」


「もっちろん! 私たちは親友ですよ! ね、セビア」


「え? あ、うん……」


「それじゃ先生は先入ってるから早く入ってこいよ」


「はーい!」


 先生に挨拶だけしてへデラとセビアはもう少しだけ話し込むことにした。


「どしたの? やっぱ元気ないぞ?」


 ぼーっとしているセビアをへデラが気にかけ、小首を傾げながら声をかける。


「大丈夫だよ……大丈夫」


「そうは見えないけどなー……そうだ、今日セビアの家行ってもいい?」


「え? あー……それは……その……」


へデラからの提案に思わず言葉が詰まる。何たって今の家は森の奥にあるのだ。


「なんか用事でもあった? 今日が無理ならいつでもいいからさ!」


「いや……その……ね、実は家燃えちゃったんだよね……」


「……今家が燃えたって聞こえた気がしたんだけど?」


「うん、家が燃えたの」


「ええっ!? ちょっとそれ大丈夫なの!?」


 へデラが驚愕のあまりセビアの肩を掴み、前後に揺さぶる。


「ご飯は? 寝る時は? 新しい家とかあるの? もしもないなら私の家来る? 私も家で一人だし」


「それは大丈夫だよ、家もご飯も問題ないから心配しないで!」


「それなら私もそっち行っていい?」


「それはちょっと……」


 家にいるのはギルだ、いくらへデラでも仮にも魔物であるギルと暮らしてるのが露見すると、少しばかりまずいだろう。

 つまりセビアには断るしか選択肢がなかった。


「そっか……それならしょうがないよね、それじゃ教室行こ!」


 へデラは納得したと言うように話を切る。しかし彼女は簡単に納得するような女ではなかった。


(怪しい……よし、尾けるか!)


 へデラはセビアを尾ける気満々だった。ストーカーの誕生である。



「それじゃあへデラ、また明日ね」


「うん、また明日!」


 一日の授業が終わり、セビアとへデラは挨拶を交わして別れる……筈もなくへデラは挨拶を交わした後にこっそりとセビアを尾けていた。


(わざわざ人目のないところに来てから森へ……まさか危ないことしてる!? ……え? そういうこと!?)


 へデラは一つの可能性に辿り着き止めるか否かを非常に迷う。しかし今は見送ることにした。


(決定的な証拠を押さえてから止めないと……!)


 そして尾けること20分、ついに彼女は見つけた。森の奥に立っている綺麗な家と外にいた背の高い男の人を。


「ギルさん! ただいま戻りました!」


 手をあげて元気良く挨拶をする。


(まだ……家に入ったらそこで……)


「……尾けられたな」


(……っ!? 見抜かれた……? この一瞬で!?)


 男は一瞬にしてへデラに気がついたのだ。視線がへデラの方に向くこともなかったにもかかわらずだ。


「……え?」


「そこにいるやつ、出てこい」


 ギルという男に言われ大人しく茂みから出るへデラ。彼女は少しばつの悪そうな表情をしていた。


「へデラちゃん? 何で!?」


「何ではこっちのセリフよ!見ず知らずの男に身体まで売って家に住まわせてもらうなんて!」


 男が出てきた時点でセビアが身体を打っているということはへデラの中で確定していた。そうでもなきゃ男がセビアを泊めるメリットなどないのだ。


「から……っ!? 何勘違いしてるの!! 身体なんて売らないよ!」


「そそ、それじゃあそっちの男はどうなのよ!」


 ターゲットを変えてギルに迫る。


「どうも何も……こんな貧相なガキの身体に興味はない」


 なんて事のないように吐き捨てるギル。


「ちょっ! それはそれでひどくないですか!? もう少し興味くらい持ってくださいよ!」


 ギルのあまりのいいようにセビアも激昂し、ギルの肩を掴み前後に揺する。


「何だ? 襲って欲しいのか?」


「そうじゃないですけど……何だか敗北感が……」


「それなら今夜でも襲ってやろうか?」


「それはやめて下さい!」


ギルの提案に、顔を赤らめ必死に手を振りながら全力で否定する。


「し……信じられないんですけど! それじゃあ今日一日私も泊めて下さい!」


「勝手にしろ、飯は出さんぞ」


「あの……ギルさん? ご飯は出しましょうよ。一応客人ですし……」


 およそ客人に見せるような態度じゃない態度で接しているギルにセビアが控えめに注意する。


「はぁ……それじゃあさっさと上がれ、布団はないからセビアと二人で使えよ、俺は一人で使いたいからな」


「言われなくても男の布団に入るような痴女じゃありませんよ! あ……後おじゃまします」


 何故かへデラがギルの家に泊まることになった。しかし夜、また一つ事件が起こる。

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用済みになった勇者は新たな脅威に〜処刑された勇者は5000年後へ〜 肩こり @kntyswr

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