金策
「パパ……ママ……」
セビアは寝付き、そしてギルに抱きついていた。涙を流して両親を呼びながらだ。
(……まずは家が必要か。ずっと野宿させるわけにもいかないな。よし)
ギルはやることを一つ決め、先日配下に加わった? 魔物達に召集をかける。
『ゴ要件ハ』
おそらく彼らでリーダーでも決めていたのだろう。魔物のうち一匹が、尋ねる。
(猫の手も借りたい時にこういうのは助かるな)
『いまから家を作る。設計は俺が出来るが……それ以外は一人では不可能だ。手伝ってもらえるか?』
『家ヲオ造リニ……コノ森ニ永住シテイタダケルトイウコトデスカ!?』
『永住は約束できんが、ある程度の期間は住むことを誓おう。頼めるか?』
『喜ンデ!』
一通り会話が終わったその直後から、彼らはすでに木を伐採して素材を生産していた。
魔術を駆使し、人を使ってぱぱっと家を完成させる。そして完成した家に簡易的なベットを作り、セビアを寝かせてギルは街へと繰り出した。なんのため? 金策だ。
◆
「よぉ兄ちゃん、今金に困ってんだけどよ……ちぃと貸してくれねぇか? なぁ、痛い目は見たくないだろ?」
やはり来た。腐ってるな、この世界の人間は。ギルは心の中でそう吐き捨てながらも、せっかくカモがネギを背負ってきたのだから無駄にする事はない、と己を宥めて冷静に話に応じることにした。
「悪いが金はない。そこで提案なんだが……どうだ? お前達が俺に全額寄越せ、そしたらその10%をお前達にやる」
言っていることは無茶苦茶だが、きっと彼らはこれで騙されてくれるだろう。なにせカツアゲなどと言う非効率的なことをやっているのだから。彼はそう考えてこの無茶な作戦に身を投じた。ギルも同じ穴の狢などとは言ってはいけない。
「おお! 話がわかる兄ちゃ……ってそれ俺らが損してるじゃねぇか! 舐めやがって……袋にしてやれ!」
思ったよりはアホじゃなかったらしい。男達は掛け声を上げ、かかって来た。ギルは冷静に対応し、そのうちの一人を殴り倒し頭を踏みつけながら他の者たちを睨みつける。
「さあ、この惨状を見た上でもう一度提案する。お前たちの財産の90%を俺に寄越さないか? それか死んでから全て俺に寄越すか、どっちがいい?」
「ふざけんじゃねぇ!!」
ギルの提案を無視し男達はギルに襲いかかる。
「……わかった、後者だな」
襲いかかってくる男達に
「それじゃあもらっていく。サンキューな」
倒れ込む男達の懐から財布を全て盗り、次のターゲットを見つけるためにその場を後にしようとする。
「ま……て……! 返せ……!」
しかしリーダー格の男だけは意識を保っており、ギルの足を掴み止めようとする。
「俺の金を盗ろうとしたんだから俺に盗られても仕方ないよな? 襲う相手を間違えた己を恨め」
ギルは掴んできている手を軽く蹴りその場を後にした。しかし少しだけ悩む素振りをしてから男達の元へと戻る。
「はぁ……10%は返してやる」
少しだけ良心が残っていたのだろうか、ギルはその場に奪った金の10%を置いて今度こそその場を後にした。
(まあ奪ってる時点で良心もクソもないな)
その後、盗んだ金で布団を2セット、それから食材を買って新しく作った家へと戻って行った。
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これでしばらく投稿休止になります。何故って? スランプだからですよ。
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