バレた魔術

ギルがセビアの家に居候を始めてからすでに100日の月日が流れた。


「結構魔素マナの扱いが上手くなったな。そろそろ魔術の修行も再開するか?」


ギルがセビアの家に住み着いてから、森の中でギルの痕跡は残らなくなった、そのため森の立ち入り禁止も既に解除され警戒体制は解かれたのだ。

 故にそろそろ訓練を再開しても問題はないだろうという考えだった。


「魔術ですか? やりたいです! ……でもなんで急に?」


久方ぶりに聞いた魔術という単語に、セビアのテンションが上がる。というのも、このところは、魔素マナの容量増強や、魔素マナの扱いに関しての訓練ばかりだったのだ。学園で講義を受けていた2年間よりも、ここ数か月の方が伸びがよかったため、リーフに心底びっくりされていた。


「ん? ああ、この間警戒体制解かれただろ? つまりもう森で修行してても問題無いわけだ」


「別に待たなくても家とか空き地でできたんじゃ……」


「家だと狭い、空き地だと人に見られる。実はこの姿だと上手く魔術を使えないんだよ。使えることには使えるんだが制御が面倒でな」


「なるほど、それなら納得です! ……ってなんで警戒体制解かれたの知ってるんですか……?」


普通に話してはいたが、セビアはある違和感に気が付いた。学園に通っているわけでもないギルが警戒体制については知る由もないはずだ。しかし知っていたのだ。


「え? ああそれはリン……いや、なんでもない。気にするな」


思わず口が滑りかけたがギリギリのところで止めることに成功……


「なるほど……共有リンクですね?」


はせずに、セビアにこっそり共有リンクをかけたことがばれてしまった。もちろんこのことを知ったセビアは憤る。


「……ああ、そうだ」


「もう僕には使わないって言ったじゃないですか!? 女の子の裸見るのは酷いです!」


「見てない、今回は聴覚だけだ」


「聴覚だけ……ってそこ設定出来るならなんで前回は全部共有してたんですか!? やっぱ裸に興味があったんですか!? えっち! ギルさんのえっち!」


胸の前で両の手をクロスし身体を守る姿勢を取ってから、少しギルと距離を置く。


「術式の構築が面倒なんだよ、あとバレにくいしな。それとロリに興味はない」


「結局バレてますよ? というかロリじゃないです! 訂正してください!」


「……まあ俺なりに気を遣ったんだぞ? 許してくれても良いた思うが……あと訂正はしない」


ダメ元で許しを乞う。ロリに関しては事実なので、訂正する気は毛頭ない。


「もういいですよ……罰として7日間ご飯作って下さい!」


「なんだ、そんなんでいいのか?」


「それから勝手に出て行かないこと! 正直結構寂しかったんですよ?」


正直しばらくは居つくつもりだったギルにとってはなんてことない条件だった。


「そんなのでいいならなんの問題もないが……なあ、もう一回共有リンクかけてもいいか?」


ダメもとでさらにお願いをした。


「それはダメです、絶対に許しません」


しかし、共有リンクに関しては絶対に許可する気はないようで、かたくなに拒否していた。


「仕方ない……それならセビアが情報を集めてくれるか?」


「情報を?」


「ああ、HRとやらで言われたことを教えてほしいだけだ」

「分かりました」


(……こっそり掛けるか? やっぱ自分で見聞きしたいところだしな)


「勝手に掛けようだとか考えないで下さいね?」


「……ああ、それより魔術やりに行くか?」


「魔術……! はい!」


なんとか話を逸らし森へ連れ出す事に成功した。やはり魔術は便利だとギルは再認識するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る