戦い方

魔素マナの使い方……ですか? 魔術以外に使い道が?」


魔素マナの使い方はそれこそ千差万別である。正直これに関しては基礎を教えるほかない。発展させるのは彼女自身だ。


「ああ、例えばそうだな……少し見ててくれ」


しかし、ある程度の着想は必要になるだろうと考え、ギルは己の持っている技の一つを見せることにした。

 魔素マナを拳に纏い、そばにあった木を軽く殴りつける。


「……何してるんですか?」


たいして力のこもってない……というよりは、一切力を込めていないような弱いパンチを機に向けて行ったギルにセビアは疑問を持つ。


「まだ見ていろ」


疑問に思って少し困惑していたセビアを横目で見ながら、殴りつけた木を軽くなでる。そして撫でた木から離れ、一回指を鳴らす。

 すると木が大きな音を立ててふたつに折れた。


「えっ……!? どういうことですか!?」


「説明は後だ。随分でかい音を立てたから誰か来るかも知れない。さっさと帰るぞ」


ギルは人間に擬態し、セビアの手を引っ張り人のいない方向へと連れて行った。


「よし……ここから出れば誰にも会わないだろ」


「あの……人に擬態してるなら別に誰かに会っても問題ないんじゃ?」


痛いところを突かれた。というかすっかり忘れていた。今は擬態していたのだから何も問題ないようだ。


「……黙れ」


「安心してください! 僕はギルさんがバカでもついて行きますよ! 強いので!」


「誰がバカだ。今森は立ち入り禁止なんだろ? 俺はともかくお前が入ってたら何か言われるに決まってる」


咄嗟に理由をつけてセビアに説明する。もちろんギルはそんなことを一切考えていなかった。


「それもそうですね、バカとか言ってすみません」


「わかればいいんだ。それよりもさっきの奴やり方だったか?」


「はい! 教えて下さい!」


「そうだな、この辺りに少し広い空き地あるか?」


「空き地ですか? それならこっちに」


迷わず空き地があるであろう方向へとセビアは向かっていく。


「なあ、お前ぼっちなのになんで空き地の場所なんて知ってるんだ? 行くことないだろ」


ぼっちはあまり外出をしないとよく聞くが実際は違うのだろうか? と、気になりついデリカシーのない事を聞いてしまう。よくよく考えたらぼっちかすら分からないのに酷いものだ。


「空き地の場所聞いておいてなんですかそれは!? それにぼっちでも空き地で黄昏たりはしますよ……」


「ああ……なんかごめんな」


ぼっちはぼっちだったようで、ギルは心から安心した。


「謝らないで下さいよ、余計惨めになりますので……あ、着きましたよ」


結構広い空き地へと辿り着く。ギルは空き地の中心にどかっと座り込み、セビアを手招きする。


「それじゃさっきのやつについて説明する、大事なことだから一回しか言わないぞ?」


ギルが人間だった頃の学生時代に、よく教師に言われた言葉だ。大事なら何回も言ってくれよと毎度思っていたのはいい思い出である。


「大事なことなら何回も言って下さいよ……」


「……よし、それじゃあまずはこんな感じで魔素マナを出せるか?」


手のひらを上に向けて、魔素マナの塊を出す。


「それなら……」


セビアも同様に手のひらを上に向けて魔素マナの塊を出した。


「それじゃあ次は爆発させるんだ。それであの技は完成する」


ギルの手のひらの上で小さな爆発が起こり、先ほどまで浮かんでいた魔素マナの塊は綺麗に消え失せていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る