修練
「セビア、何か悩んでるのか? 今日の講義、ずっと上の空だったぞ?」
先日ギルから言われた言葉について考えていて、講義をろくに聞いていなかったセビアにリーフが注意しようと話しかける。
「リーフ先生……何でもないです、気にしないでください」
あくまでも自分の問題だ。仮に教師から答えを得ても自分のためにはならないだろうと思い、相談はしていなかった。というか彼女のプライドが許さなかった。そうは言っても、全く分からずに困っている訳だが。
「そうは言っても気になるぞ? 何でもいいから話してみると楽になるから話してみな」
いくら嫌いでもなんでも、学園で唯一話せる教師なのだ、聞いてみるのもいいかもしれない。先程持っていた自分の思考もプライドも全て捨て去り、聞くことにした。
「それじゃあ……魔術を使うときに大切なものって何だと思いますか……?」
答えを得て、ギルに魔術を教えてもらうため、彼に聞かれた質問をそのままリーフに投げかける。
「それは魔術陣の精度だ、授業で何度もやってるぞ?」
「……そうですよね、変なこと聞いてすみません!」
しかしいい回答を得ることは出来ずに、セビアはしょぼんと落ち込んだ。それを見兼ねたのか、リーフは少し考え、そしておもむろに口を開く。
「一つ……私の家にかなり古い本が置いてあった。それが確か魔術に関する記述だった、確か……その本には想像力って書いてあったぞ」
リーフの家に眠っている古い本。およそ5000年くらい前の代物だったそうだ。
「想像力……ありがとうございます」
満足な答えを得られたようで、先ほどと違いセビアの表情は晴れやかなものになり、リーフも一安心である。
「おう! 困ってたらいつでも言ってな!」
「ありがとうございます。それじゃあ失礼します」
「また明日な!」
セビアはリーフに背を向けてギルのいる森の方へと歩いていく。
「おい、ちょっと待てよ。どこ行くんだ?」
しかし森に向かう途中、ニッグに呼び止められる。
「関係ないでしょ、どいて。僕は用事があるの」
ーー正直話したくもない。
セビアは露骨にいやそうな表情をニッグに向けた。
「悪いけど退けねぇな、俺もお前に用事があるんだ。それに森は立ち入り禁止だぞ?」
「別に森に行くわけじゃない。いいからどいて」
言っても無駄だと考え、無視して横を通り抜けようとする。
「待てって言ってんだろ。少しは待てよゴミ」
しかし通り抜けようとした瞬間、セビアの腹部に拳が飛んできた。
「何してんだ、早く行くぞ」
セビアとニッグの間にギルが入り込み、ニッグの拳を受け止める。
「貴様この間の……! 何の用だ!」
またこの男が邪魔をするのか、とニッグは助けにきた? ギルを強く睨む。しかし所詮は子供だ。子供に睨まれたからと言ってどうと言うこともなく、ギルは軽くスルーする。
「お前に用はない、こいつにあるんだよ。それじゃ行くぞ」
用があるのは本当だ。まだセビアには死んでもらうと困る。貴重な情報源なのだ。
「ま、待て! まだ話は終わってない!」
「する話などない」
ギルはニッグを鋭く睨みつけ、セビアを連れて街の方へと消えていった。
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