はじめての生徒
もしや、自分の知り得る全ての情報を持っているのではないか? と思えるほどにセビアのことを知っているギルに、彼女は思わず監視されているのでは? と疑う。一瞬『
「気にするな」
「もういいですよ……僕はあの人が一番嫌いです」
セビアの口から出た言葉にギルは心底驚く。彼が見る限りリーフという人間はセビアの味方であったからだ。
「……何故だ? 俺が知る限り奴はお前の唯一の味方という感じだったんだが……」
「嫌です……言いたくありません……」
「ならいい、早く戻れ」
ギルは話を切り上げてさっさと戻るよう指示する。
「あの……魔術を教えて下さい!」
しかしセビアはそこから動かずに頭だけを下げ教えを乞うてきた。
「……随分と都合のいい奴だな、リーフとやらに関しては言いたくない、そしてその直後に魔術を教えろと?」
口に出してから少しだけ疑問に思った。自分も
「それに俺は魔物だ。何故魔物である俺に教えを乞う? それこそ学園の騎士とやらに教えて貰えばいいだろう。学園なら俺より強い教員など山ほどいるはずだ」
正直教えたくはないので自分が魔物である、ということをフル活用する事にした。
「貴方は自分より格上のAクラス騎士二人を殺しています。余程魔術の扱いが上手いのではないでしょうか?」
元勇者であるだけあり、魔術や武器の扱いは人並み以上であるという自負はある。しかし彼は怖かった。一度裏切られた身であるからこそもう一度裏切られるのでは? という恐怖もあったのだ。そう、次に裏切られたら今度こそ自分は完全に魔物となり、人類に完全な敵対をしてしまうのでは? という恐怖があったのだ。
「残念だが、俺が奴らに勝てたのは戦いの最中に
咄嗟に出た言葉であったがこれは事実だ。もし仮に
「
「……まあいい、それじゃあ一つだけ聞かせろ。お前が最も嫌っているリーフとやらが言っていた討伐隊っていうのはどう言うことだ?」
あの二人が来てから、一つだけずっと気になっていたことをセビアに問う。
「討伐隊? 何のことですか?」
「お前がリーフと話していた時に言っていただろう。討伐隊が組まれるとか」
二人を相手取るだけでもあれだけ苦戦したのだ。あんなのが10人も20人もこられたら流石に現状では敵わないだろう。最悪は森を出ることも考えなければいけない。
「ああ、あれは気にしなくていいですよ、あの人すごい大袈裟なので。少し魔物がでただけで討伐隊だの何だのって騒ぐんです、情報の仕入れ先は……もう聞きません」
そろそろ
「懸命な判断だな。まあ魔術に関しては教えてやる」
「いいんですか!? ありがとうございますっ!」
(勝手に
ギルは勝手に魔術をかけたことに少しだけ罪悪感を感じていた。都合のいい奴にもならないために、ここらで教えておくが吉だろう、と考えた。
「それじゃあまずは一つ目だ。魔術を使う時に大切なものは?」
「……魔術陣の精度でしょうか……? 学園ではそう教わりました」
「残念、的外れだ。まずはここからだな、明日までに考えてこい。そしたら自ずと答えは見えて来るだろう。それじゃあもう帰れ。少なくとも今のお前に教えることは何もない」
そう言ってセビアに背を見せ、ギルは森の奥へと消えて行った。
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