第2話 手紙の中身
分厚い封筒だけど、とりあえず開けてみた。読む時間がもったいない。僕は早くYouTubeが見たい。それに、この後は塾だから、前の授業の見直しも必要だ。
取り敢えず目を通すことにする。返事を出さないとママが怒る。ざっと見ればいいや。子どもっぽい便せんだったけど、僕より字が上手かった。習字も習ってるって聞いた。本人から聞いたか、ママからか忘れたけど。字なんか読めればいいんだ。僕は開き直る。
『怜君へ
いきなりでびっくりすると思うけど、僕はずっと君のことが好きでした。先月、空手をやめてしまってすごく寂しかったよ。僕たちは学校が違うからもう会う機会がないと思うと、たまらなかったです。僕は君のことを6歳くらいからずっと好きだったけど、君は男子が好きなわけないし、僕は気持ちを打ち明けるのをすごく迷いました。でも、最期にどうしても言いたかった。この手紙を読んでいる頃には、僕はもう生きていないと思います。もう一回会いたかったな。これから、怜君が幸せな人生を送れるように、僕は君を守ってあげたいと思う。今までありがとう』
「ママ!」
僕は叫んだ。
「ママ!ママ!大変だよ!」
僕は幼稚園の時に、道で転んだみたいに、僕は大声でママを呼んだ。啓太君が死んでしまう。
「どうしたの?」
「啓太君が死ぬって」
「えぇ!」
ママはびっくりしていた。そして、すぐに啓太君のママの携帯に電話を掛けた。
結果は・・・最悪だった。
もう、昨日の夜に自殺をして、病院で亡くなったそうだ。
僕はその日、塾を休んで、寝込んでしまった。
「怜。あなたのせいじゃないからね。あっちが片思いしてただけなんだから」
そう言われても、僕のせいで人が亡くなったと想像しただけで、自分がすごく悪いことをしたような気がして来た。そして、死んだら地獄行が決まっているかのように感じる。僕は泣きじゃくった。
僕はショックで家から出れなくなってしまった。
いつも啓太君が傍にいるような気がした。
部屋でゲームをしていても、ベッドで寝ていても、ご飯を食べていても、スマホを見てても、お風呂も、トイレもすべて見られている気がした。啓太君は僕のことをどんな風に好きだったんだろう。それがわからない。恋人みたいに好きだったのか、友達としてか、人間としてなのか。啓太君の手紙は、ママが向こうのご両親に渡した。最後の手紙だからかもしれないから、と言っていた。
啓太君のご両親は僕に謝っていた。「啓太のことは、忘れてやってね。本当にごめんね」と言っていた。忘れられるわけなんかない。僕に告白できなくて死んだんだ。一生彼の影が僕に付きまとう。啓太君のお母さんは不妊治療をして、やっと啓太君が産まれたから、一人っ子だった。だから余計かわいそうだとママは言っていた。
それから、啓太君のご両親はよくうちに遊びに来るようになった。僕に会うためだ。僕に会っていると、どうして啓太君が僕のことを好きだったのかわかる気がすると言ってた。僕がきちんとしてて、清潔感があって、頭がいいところが素敵だと言われた。僕はきちんとなんかしてない。お母さんが服にアイロンをかけてるからそう見えるだけだ。
2人が僕を見る時は、完全に啓太君の目で見ている。頭の中に啓太君がいるんだ。もともと2人の細胞からできてるんだから、それがわかる気もする。医学的には全然根拠がないけど、2人を足せば啓太君の体ができる気がした。また子どもを作ればいいのに。でも、啓太君のお母さんはもう50歳だったから、出産は無理だということだった。もう、閉経してしまったと、ママが言っていた。閉経っていうのは女の人の生理がなくなることだ。そうなると、もう子どもができないそうだ。
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