第2章 お宝探し

第10話 運のちから

🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷

「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテストの応募が締め切られましたので、続きを第二章として再開いたします。

なお、第一章の方は審査が終わるまで修正とか出来ないようですので、誤字・脱字等はそのままになっております。申し訳ありません・・。

今後の掲載は不定期となりますので、ご了承のほどを・・。

🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷🔷



夏季ダンジョンが開放されてから半月ほど経った。

ここはエントランスホールのダンジョンアタック受付。


俺とマールのステータスは以前と同じように無難な数値にカモフラージュしてある。今日の朝、家を出る時ナルモのステータスも同じように細工した。まずこれが彼女の本当の値だ。


【名 前】 ナルモ(ラッキーキャット族)

【年 齢】 10

【JOB】 シーフ

【職業レベル】 5

HP  59

MP  19

筋力  10(+30)

体力  12(+35)

知力  14  

魔力  18

敏捷  24(+40)

運  999(LOCKー3)

【一般スキル】

<トレジャーハント><弓術>

【特殊スキル】 

【ユニークスキル】

【装備】

「ライトニングボウ」

矢に電撃を付加する事ができる弓

威力は装着者の魔力による

レア度:超レア級


「ウィークポイントアロー」

必ず急所に命中する

レア度:反則級


「トレジャーアイ」

隠された扉、ワナを見つけることができる片眼鏡

成功確率は装着者の運による

レア度:伝説級


「やまびこのイヤリング」

近くに宝がある場合知らせてくれる

成功確率は装着者の運による

レア度:伝説級


「頑丈なチュニックワンピース+10」

筋力+20 体力+25

レア度:超レア級


「束縛のブレスレット」

呪われた防具 装着者の力を封じる 重ね掛け可能

レア度:超レア級


「疾風のサンダル」

敏捷+40 

レア度:超レア級


【一般スキル】

<トレジャーハント>   

       SL①:マッピング

       SL②:ピッキング(簡単な鍵、軽微な罠を外す)

       SL③:??

<弓術>   SL①:弓・矢 装備可能

       SL②:5m先の的に当てることができる

       SL③:??


そしてこれが操作後のいんちきステータスだ。

【名 前】 ナルモ(ラッキーキャット族)

【年 齢】 10

【JOB】 シーフ

【職業レベル】 5

HP  17

MP  19

筋力  10

体力  12

知力  14  

魔力  18

敏捷  24

運   25

【一般スキル】

<トレジャーハント><弓術>

【特殊スキル】 

【ユニークスキル】

【装備】

「弓矢(下級品)」

「シーフの片眼鏡(下級品)」

「貸出用掃除チュニックマント」

「貸出用掃除サンダル」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


パラメータでの最高値は確か高齢のハイエルフの魔法使いの500前後だったと記憶している。

なのでマールの知力と魔力、ナルモの運はありえない数値だ。

もっと怖いのはナルモの最後の鍵、つまり呪いを解除するとどうなる?

まさか9999という数値になるのか?

いまだかつてパラメータが4桁と言うのは誰も想像もしていなかった。

そもそも何百年もの間、3桁つまり999の値がMAXだと信じられてきた。まあ俺もそう思っていたしな。


・・だが、これが判明したとしてほとんど関係がないな。あはは・・・。


というわけで、今日から地下二階へと進んでいる。

ナルモはマールから掃除の手ほどきをして貰いながらだ。


ここで問題が発生した。

この地下二階と地下一階をつなぐのは階段だけだ。

エントランスにあったようなスロープ、つまりなだらかな坂ではないということだ。ということはリアカーは使えない。

うまい具合にゴミを満載したとしても、リアカーでは階段を登れない。

もちろんエレベーターなんてものは存在しない。


いわゆる地下二階以降のゴミは、人力で運びあげるしかないのだ。

「下へ落とすってのはどうかにゃ?」とナルモ。

それだと下の階が迷惑するだけだ。

「廃棄部屋を作って溜まったら燃やすのは?」とマール。

う~ん、煙の後処理が面倒だ。

「10階の魔法陣は?」とこれもナルモ。


10階、20階、30階のゲートボスを倒すと、地上に一瞬で戻れる魔法陣が出現する。これは一回でも誰かが出現させれば、その後誰でも使えるようになるのだ。なのでそこまでゴミを落としていけばいいんだが、もちろん下層は魔物も強くなるので、その案も却下だ。


俺の持ってるアイテムボックスも頻繁に出し入れをすると誰かに見つかる恐れもある。

さて困ったぞ。でもこれでは先に進めない。

一旦、階段近くのスペースをロープで囲んで、「ゴミ置場」と立て札を立てておいた。これだけでも全然違う。暫定処置だな。

俺たちは近くにある捨てられたゴミをそこに寄せておいていよいよ奥へと探索を開始する。


前には気配探知の力をもった召喚獣のアルラウネのララちゃんを胸元に入れたマール。すぐ隣に、隠された扉やワナを見つけることができる「トレジャーアイ」と、近くに宝箱がある事を教えてくれる「やまびこのイヤリング」を装備したナルモ。後ろは俺だ。

前の女子二人は、筋力や体力を増強した装備で固めているので、この地下二階ぐらいでは問題はないだろう。それに小柄な二人なので並んで歩ける。おそらく地下五階まではこのままで行けそうだ。


相変わらずここもゴミが多い。

さっき運搬用のリアカーをこの階に何とか下しておいたのだ。

筋力UPのおかげで特に苦労することなく持ってこられた。

まあ、空だったからな。


なので通路の真ん中に落ちているゴミなんかを優先して片付けながら進む。今回、ナルモの運パラメータの影響の確認も兼ねているが、ここまでは特に目立ったことはなかった。

捨てられた武器、防具、アイテムなんかは急に物凄いレアなものに変化するわけもないからな。


だが、あの部屋に入るまでは・・・。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


一日かけて、地下二階の四分の一の片付けを終えた。

魔物もそこそこ出てきたが、マールの魔法や、ナルモの弓術で問題なく倒すことが出来てる。俺の出番は無し。というか俺が魔物を倒しても、ほとんど経験値が入らない。掃除人は掃除をすることで経験値が入るからだ。

なので危険な場合はもちろんフォローするが、とりあえずは今のところ問題なしだ。そろそろ上がろうかとマールと相談していた時に、ナルモが奇妙な事を言ってきた。

「変だにゃあ、この違いってなんだろにゃ・・」

??

「どうした?ナルモ」

「うん、貰ったマップとあたしが作ったマップで微妙な違いがあるんにゃ」

その二つを見比べてみるが、おんなじだと思うがな。


「あれ?ここじゃない?」とマール。


ふむ、確かに通路と部屋の間の壁が他と違っているな。

市販のマップだとそこはただの線。

ナルモのは壁の厚さを含んだ情報も加味してある。

う~ん、そこはただ単に壁が厚いだけじゃないのか。

だが、とりあえずそこに行ってみることにした。


そこの部屋は、北向きに扉がひとつあり、西側に通路がある。

地下二階の一番東南の隅にある部屋だ。

ちなみにその扉は西側の通路から約50cmほどのところに造られている。ああ、たしかに変だな。

通常の扉は隅にぴったり作られているんだが。


この50cmの幅はなんだろう・・。

まずは普通に扉を開けてみる。

部屋の中には2~3匹、ネズミのような魔物がいたが、ナルモが喜んで退治していた。・・まあ猫だからな。

中に入っても何もない殺風景な部屋だ。もちろん最初に入ったパーティがねこそぎ持って行ったんだろうな。

「この部屋には何もないな」

と言ったがナルモはしきりに入口の扉そのものを触っている。

「なんか耳から音がするんにゃ」

え?ああ「やまびこのイヤリング」か、お宝と共鳴しているのか?

でもこの部屋には何もないぞ。


すると扉を調べていたナルモが突然叫んだ

「あれ?これ横にも動くにゃ!」

はあ?そんな扉なんて聞いた事ないぞ?

俺も近寄って見てみた。

その扉は部屋の中と外側に両方に開く造りだ。


ただ水平にしたとき若干微妙な動きをしたのだ。

ナルモを見ると、うんうんとうなずいている。


え?おお!この扉は横にもスライドするんだ。

少しがたがたするがなんとかうまく開けることができた。

そして現れたもうひとつの入り口。幅50cmもない。

通れるのか、こんな狭い通路。いや通路というより隙間だな。

奥をみると暗い隙間が続いている。


俺たち三人は頷き合い、その奥を目指すことにした。

先頭はララちゃんを連れたマール。

「どうやら危険はないみたいだって」

次にマッピングをしながらナルモ、ランタンを頭上に上げて灯りを照らした俺が続く。狭いので壁にくっつきながら歩く。

服が汚れるが掃除用の服だ。問題ない。

やがて辿り着いた小さな部屋。2m四方しかない。

市販のマップ、ナルモのマップでもここは壁の中の表示になっている。


隠し部屋か。


そしてこの部屋の中央には小さな宝箱がひとつ。

「ちょっと待ってにゃ。罠はずすにゃ」

大丈夫か、ナルモはまだレベルが低いぞ。

「あ!間違ったにゃ!」

え?ナルモが開けた途端ナイフが飛び出てくるのが見えた。

危ない!ナイフの罠だ!


・・だが、そのナイフはナルモを大きく外れて背後の壁に突き刺さった。

「おっと危なかったにゃ、運が良かったにゃ~」

いやいや、運がいいなんてレベルじゃないぞ。

今こいつの運のパラメータはこの世界で一番高いだろう。

おそらくどんな罠でも攻撃でも、全てかわせるだろうな。


「あれ?これしか入ってないにゃ」

と言って取り出したのが、ひとつの指輪。


「転移の指輪+5」

祈りを捧げる事でその場所と瞬時に行き来が可能になる

付加数値分の場所を記憶出来る 変更も可能

レア度:超反則級


はあ?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


いくら隠し部屋とはいえ、地下二階で出てくるようなお宝じゃない。

最上位のゲートボスレベルの討伐報酬として出て来るものだ。


「あたしがいてこんなお宝出たのは初めてにゃ」

まあそうだろうな。いままでは普通の冒険者よりも低い運だったからな。


そこでいきなり気づいた。


ナルモの呪いの装備は、こいつの両親がわざと装着させたんじゃないか?

生まれた時にこの事が分かり、公になるとこのナルモは道具をして使われると。生まれたばかりでダンジョンへ行かされたり、戦争、駆け引き、はたまた交渉用の品物として。

それを隠すために泣く泣く我が子に装備させたのか。愛するがゆえに。


きっとそうだろう。

だが今は俺のステータス操作で分からないようになっている。

ああ、マールの正体もそうだが、このナルモも守らないと。


今日はこれで終了として、家に帰ってきた。

あの指輪は、マールに渡し、装備して貰うことにした。

そしてこの家をまずポイントするようにした。

なにか危険に遭った場合、すぐにここに戻ってこれるようにだ。

もちろんナルモにも了承済だ。

「あたしはおにゃかいっぱい食べられれば」ということだ。

なので今日はナルモの好物の魚の干物を多くした。


次の日は、先に進まず地下一階に戻り、ナルモを入れて再度探索した。

今度はナルモを先頭にして、運を解放した時のマッピングと「やまびこのイアリング」を装備しての再探索だ。

その結果、似たような隠し部屋がひとつ見つかった。

やっぱりそこには宝箱がひとつ。

中には巻物があった。


「レベルアップの巻物」

職業レベルを+1する

レア度:反則級


うおお!

なんでこんなのが地下一階で出るんだよ・・。


俺がこれを見たのは二回目だ。

たしかどこかにダンジョンで20階層前後のボスを倒した時に出現したということをその本人の賢者から聞いたことがある。だがその賢者は既に高レベルだったんで、オークションにかけて売ったらその金額が途方もなく、10年は遊んで暮らせる金額だったと。


なにでこれはナルモへ。

「食べるものが無くなったら売ることにするにゃ」

いやいや、食べ物に換算するなよ・・。


次の日も地下二階の清掃&宝探し。

もちろん清掃がメインだ。俺たちは掃除屋だからな。

やっぱりまだ浅い階層だからか捨てられた武器防具類が多い。

なので今日も四分の一くらいしか片付けられなかった。

でもナルモがまた隠し部屋を見つけた。


中央付近のその小部屋に入った際、少し圧迫感を感じたくらいで特におかしな部屋ではなかった。

壁の厚さも妥当で、レンガ一個分くらいの厚さしかなくとても隙間など考えられない。だがさっきからナルモが装備しているイヤリングがリンリンと音を立てている。お宝が近い証拠だ。


ナルモはさっきから部屋を出たり入ったりしてる。隣の部屋とかとも比べている。

「やっぱりこの部屋狭いにゃ」

いや、広さはこんなもんだろう?

するとナルモは天井を指差し、「天井が低いんにゃ」と。


え?

「あっ!本当だ!ナルモちゃんの言うとおりだわ!」

・・俺はまだ分からない。隣の部屋や通路の天井と比較してやっと理解した。暗くて良く見えないが確かに低い。なるほど、入ってきた時の圧迫感はこれか。


「でも入口なんかないよ」とマール。


「ここっぽいにゃあ」と、今度は「トレジャーアイ」を装備したナルモ。

俺も貸して貰ってその天井を見た。

おお、暗いが確かに何か見える。引っ掻け釘?

モップを逆さまにしてその引っ掻けるところにかけて下に引っ張った。

途端にガタン!と音をたて、階段が斜めに降りて来た。

そしてその先に天井裏への暗い穴が見えた。

「魔物いないみたいね」とマール。というかララちゃん情報だ。


3人揃ってその天井裏に入った。さすがに俺はきつい。

その隅にこれも小さな宝箱。

「十分注意しろよ!」

「うん、任せてにゃ!・・・・あっ、まずいにゃ・・」

なに?また失敗か!


ナルモが開けた宝箱からいきなり黒い煙が出て来て・・・それだけだ。

は?なに?何も起きないぞ。

でもナルモはその中にあったアイテムをひっつかんですぐに戻ってきた。

「不発にゃ!すぐ逃げるにゃ!!」

うわあ!

俺たちは逃げるように階段を駆け下り、急いでその部屋を出た。

ドアを閉めた途端、くぐもったドゴーン!という音。

「・・あははにゃあ」

「もう・・危ないわねえ・・」


おいおい幸運にもほどがあるぞ・・・。まったく・・。

少しドアを開けたが煙が充満している。

俺は「清掃中」の札を掲げて、その部屋を離れた。


そしてナルモが引っ掴んできたあのアイテムを早速鑑定してみた。


「指先の魔術師のネックレス」

手先の器用さを80%UPする。

レア度:超伝説級


しかもここにきて最も欲しかったアイテムだ。

当然ナルモに装備。

これが運999の力なのか?ありえない。


これでもう一段階、呪いを解除したらどうなるんだよ・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る