Ⅸ
■九.
あなた以外に何もいらない。
あなた以外のものは欲しくない。
連れて行って。
その頃に呼ばれていた名が何だったかもう想い出せない。当時タキトゥスは用心棒や護衛を貸し出す剣奴の商売人の家に奴隷として繋がれており、剣術や闘拳を教え込まれていた。
不幸な結婚を強いられていた女と逃げた。夫に殴られているところを何度か庇って女の代わりにタキトゥスが殴打を受けた。馬や牛のように鞭で叩かれた。
奴隷がその家の主の妻と逃げたのだ。追手に囲まれた時、女は僧院に行くと云いタキトゥスを庇った。彼を殺すならわたしも今ここで死ぬ。
タキトゥスは剣闘士養成所に送られた。
それ以上殴ったら壊れると想うほど女が殴られていたので庇わずにはいられなかった。タキトゥスだけでなく夫に虐待されているその女も奴隷のようなものだった。女が殴られるのを見ているくらいなら鞭を浴びたほうがましだった。どちらにしたって底辺だったからだ。
上がることも下がることもない。未来も出口も希望も自由の可能性も何もない。残酷な主はタキトゥスの前でわざと妻をいたぶっていた。生き地獄だった。
同じ地獄の底でタキトゥスは主の妻と同じように身を沈めて息をしていた。打擲の時が過ぎるのを待っていた。その家での記憶はまとめて赤黒い。
それでも夫に殴られた女が床から半身を起こし、白い腕をタキトゥスの首に投げかけて彼に云ったその言葉だけは憶えている。連れて行って。
「奴隷と女が逃げたぞ」
「追え」
隷属するのに慣れ切った奴隷のはずだった。自分でもまさかと想うことをやったのは、女の涙に濡れたその眸にこもっていた男にはない何かの力だった。
「第六軍を助けに行ってもらいたい」
アフロディテは招集をかけた男たちに告げた。
第六軍といえば、蛙が引き延ばされたような風体の男が将だ。ユリウスの顔を思い浮かべて幕僚は露骨に嫌な顔をした。将はあれでも、第六軍の兵士の方は勇猛ではなかったのか。
「フラミニウスから説明させよう。フラミニウス、前へ」
第六軍に配属されていたフラミニウスが出てきた。何かとまとわりついてくるこういう人間には注意した方がよかった。最初からフラミニウスはアフロディテ軍に入ることを希望していた男だ。
アフロディテはフラミニウスを横に立たせた。
「フラミニウスは先程わが陣に到着したものだ。第六軍の危機は彼からきいた」
他軍に助力を乞うような危機を招くとはなにごと。六軍への不満を隠さない将兵たちがそれ以上顔に出す前に、アフロディテが黙らせた。
「帝都防衛が主務であった第六軍は戦に不慣れである。また、皇帝陛下からの命で我の傅役が第六軍に派遣され、ユリウス殿に随行している」
視界の端で傅役の孫のエトナが愕いていた。
「フラミニウス」アフロディテは促した。
「いそぎ、説明してもらいたい」
「は」
広げた略図の前でフラミニウスは状況を語った。辺境の砦に入ったところで外界に通じる唯一の橋を敵軍に抑えられてしまったということだった。
「敵とは」
「軍旗は、南の国のものでした」
「東の国に続いて南の軍も入って来たのか」
ちまちま齧ってくるような周辺諸国の侵攻に皆うんざりした顔をした。将校たちは第六軍に対しては「まぬけ」という感想を洩らさずにはいられなかった。要の橋を敵に渡さぬことは初歩の初歩。第六軍は相当に油断していたとみえる。
フラミニウスは否定した。
「いえ、その砦に入ることは急遽決まったことであり、南の国の軍が近くにいるとは予測しておりませんでした」
「つまり」
「先方も我らが近くにいることは知らないようでした。たまたま会敵したものと想われます」
「フラミニウス。貴殿は何故こちらに来ることが出来たのだ」将校が訝った。
「橋を取られて砦は南の軍に包囲されているのではないのか。その橋が唯一の外界との接点なのだろうが」
「たまたま哨戒に出ておりました。わたしは外にいたのです」
よどみなくフラミニウスは応えた。
「南の軍勢が橋を奪取するところを目撃して、こちらに救援を求めるべきだと判断したのです」
「帝国の領土内だぞ。アフロディテさまの傅役殿も附いているのだ」
近衛兵は顔を見合わせた。
「砦から兵を出して今ごろは橋を取り戻しているのでは」
誰もがあまり深刻に考えてはいなかった。姫の傅役は現役時代、第三軍の老将軍と共に戦場を渡り歩いた強者だ。戦にも慣れている。
しかし次のフラミニウスの言をきいて一同はとび上がった。
「それを早く云え」
乾燥した木々は擦れることで発火することがある。本来野営をするはずだった丘陵地がそうやって起きた不意の火事によって野焼きになってしまい、将ユリウスとわずかな供回りだけがその砦に移っているのだという。
「残った部隊と砦の間に敵軍が布陣し、六軍は分断されているということか」
「フラミニウス、ユリウスさまと砦に入った僅かな手勢とはどのくらいなのだ」
「百名ほど。南の軍勢は丘陵地に残った第六軍と砦にいるユリウスさま方の合間に立ち塞がっており、砦の橋を占拠した後は、丘陵地の残留部隊と睨み合っております」
「それはもう砦の中のユリウス殿は人質も同然ではないか」
幕僚はざわついた。アフロディテがそこで云った。
「砦におられるユリウス殿をお助けせよ。フラミニウスと共に現地に向かい、砦を解放してもらいたい。近衛将校からはストラボ、マイウリ」
「はい」
「それとタキトゥス」
「は」
「そなたも行くように」
「行きません」
言下に拒否した。タキトゥスは皇帝からアフロディテの護衛を頼まれているのだ。しかしアフロディテは「半刻のちに集合。急ぐように」と云い捨てて席を立って行ってしまった。タキトゥスはぼやいた。
「人選を再考してもらおう」
しかし近衛隊に諭された。
「それは、姫さまが、傅役殿を助けたいからだろう」
「ご両親亡き後、傅役殿と傅役の奥方が実質アフロディテさまの親代わりだったのだ。塔の中には傅役殿もおられる。姫さまが救いたいのはユリウスさまよりも傅役殿だと想うぞ」
タキトゥスは気になっていたことを訊いた。
「姫さまの親である先帝の皇弟夫妻はなぜ死んだのだ」
「自死だ」
あまり触れてはならない事柄らしく近衛隊は口ごもってしまった。アフロディテの父母は夫婦で沼に身を投げたのだそうだ。沈んだ者は二度と引き上げることは叶わぬ黒い沼に投身したという。それも幼いアフロディテの眼の前で。
「孤児になってしまわれたアフロディテさまを成年になるまで傅役夫妻がお育てしたのだ」
「エトナは傅役殿の孫だが、実の孫よりも尊い血筋を引く孤児の姫さまにかけてきた傅役夫妻の情は深いのだ」
そこまで云われたら行くしかない。
実は最近、姫さまと喧嘩した。
アフロディテに剣術の稽古をつけていた。真剣にやっていたが時々悪戯心が出て、女たちと踊る時のように姫の手を掴んでくるりと回したり、男の腰に添わせるようにして泳がせていた。それが姫さまにばれて剣術の稽古は終わりになった。
「姫さま」
情けない声を出してすがってみたが駄目だった。ああこの女もこういう顔をするのだなあと感心したくらい、穢れた雄を見る眼付きで軽蔑された。
「そんなつもりはなかったのだが」
「それ、あと一歩で痴漢ですよ痴漢。頭の中だけにしてもらえますか。女の方々からすれば同じことですよ」
仕方がないので剣稽古はエトナを相手にすることにした。伸び盛りの少年は大歓びだった。エトナはタキトゥスの指導の元ぐんぐん上達して、模擬剣を合わせる力も盾を叩く力も日増しに強くなっていた。
傅役はアフロディテの親代わりであり、エトナの祖父である。タキトゥスも世話になっていた。
「まあ早く済ませて帰ろう」
ストラボとマイウリが鎧の音をさせながらやって来た。
「あの男の話では砦から外に通じる唯一の橋を取られたということだから、橋を取り返せば終わりだろう」
姫さまのご機嫌を損ねているタキトゥスとしては姫さまに赦してもらう為にもここは行かないわけにはいかないようだ。
「従者のミュラはどうした」
フラミニウスに訊くと、「あの男は少し扱いが難しいので」とフラミニウスは素っ気なく応えた。つまりユリウスに押し付けたのだ。
アフロディテは出立を見送りに来た。高貴な女人への礼儀上、男たちが馬から降りようとするのを片手で止めて、
「万事宜しく取りはからって無事に戻って来てもらいたい」と云った。
通りすがりに馬上からタキトゥスが頭を下げると、視線を逸らしたまま頷いてくれた。まだ怒ってる。
「エトナからきいたぞ。軽い気持ちであっても女からすれば同じなんだよ」
「姫にそれやるとかお前。それはもうお前終わったわ。駄目なの絶対駄目。女は尻軽女あつかいされたとしか受け取らない」
「邪念に煮え腐りやがって。遊びを誘う真似をしてよいのは夜に逢えるご婦人に対してだけだ」
自重しろ。とまで近衛隊から一斉に叱られてしまった。違うというのに散々だった。
殺せと命じられている姫君と常に顔を突き合わせているというのは妙な気分がするものだ。眼の前にアフロディテがいると、身動きされるその度に首や胸や一撃で終わらせることが出来そうな急所に眼が留まる。これが毎日続く。精神衛生上よろしくない。
「タキトゥスはどう想うか」
いつぞやの夜など、小卓を挟んで兵の編成図を見ていたアフロディテが不意に顔を上げたので顔と顔がぶつかりそうになった。深夜に近く、幕屋には二人きりだった。
「失礼しました」
タキトゥスから身を引いた。姫はそのまま顔を落として引き続き編成図を見ていた。タキトゥスもそうした。
月のない夜だった。アフロディテは夜衣の上から属州で織られた毛織物を巻きつけるように羽織っていた。着ぶくれしていても小さい。顎の下に抱え込みたくなる。アフロディテがいけすかない皇子であれば抱かないであろう細かい感情が邪魔だった。
「遅くまでご苦労だった」
「卓上を片付けましょう」
「そのままでよい」
二人きりとは云ったが、護衛兵は天幕の外で四方を固めて寝ずの番をしている。それでもタキトゥスがその気になって手を伸ばせば、一瞬で姫を殺せる。
将の天幕は内部が三つの室に区切られていた。姫さまの寝所は帳で隔てられた二つ向こうだ。タキトゥスが扉の代わりの帳を大きく開いてアフロディテを通してやった。次の二の間は衣裳函の置き場で、寝室はその奥だ。蝋燭の小さな火が寝所を内側から照らしていた。
「お休みなさい」
アフロディテは眠いのか、小首を傾けるようにしてタキトゥスに頷いて奥に消えた。
「アフロディテさまと離れるのは初めてだ」
ストラボとマイウリが話していた。七軍から選ばれた兵士たちは馬を軽く駈けさせてユリウスのいる砦を目指した。
元々女を殺せという命令を受けた時点で本意でなさすぎた上に、悪い女ではないから無駄な感情が絡んで面倒だった。ぴしゃっと手を叩かれて終わりになる町娘たちのようにはいかないのも半端に扱いにくい。少し離れてみるのは悪くないと想えた。
六軍の立て籠っている砦はまだ先だというのに、タキトゥスたちは山を迂回する道の途中で外国軍の一部隊と出くわした。先方も愕いていたが、こちらも不意のことで愕いた。互いの部隊に緊張がはしった。すぐにストラボが単騎で前に出ていった。
ストラボが声を張り上げた。
「その旗印は西国のもの。此処が帝国領土と知っての侵犯か」
小競り合いを続けている東の国、六軍の砦を抑えている南の国に続いて、西の国の軍まで現れた。
向こうからも隊長と思しき男が進み出てきた。敵意はないと云って剣帯を外した上で馬まで降りた。隊長は謝罪を入れてきた。
「我らは南の国と境を接する西国の国境警備隊だ。領内で暴れた賊を追っている」
「賊だと」
「この辺りを通過したはずだ。急ぎ、追いかけていたところだ」
「ただ賊を追っていると云われるか」
「われらの眼前で乱暴狼藉をはたらいたのだ。許せぬ」
「それを証明することはできまい」
ストラボは厳しい顔を崩さなかった。
「断りなく武装したなりで帝国領に踏み入ったからには敵意ありと見做すのが定法。ここで討ち取られても、西の国には一切文句が云えぬはず」
背後では、マイウリが片手を高く挙げて兵たちに戦闘用意を呼び掛けていた。ストラボもマイウリも普段は穏やかといってもいいくらいの温厚な二人なのだが、こういう際にはさすがは皇軍の将校、強硬な姿勢になるようだ。
タキトゥスはマイウリを掴まえて囁いた。
「彼らは捨ておいて先に向かおう。こんなことをしている時ではないだろう」
黙っておけと眼で返答された。
ストラボのいる前の方から声が聴こえていた。
「我らには帝国への敵意はない、交戦するつもりもない」
西の国の国境警備隊の隊長はすぐさま後方に控えている兵たちに武器を手放すように命じた。
「剣を地に棄てよ」
「投降されるか」
「いや、出来ればこのまま国に戻りたい」
「領土侵犯を見逃せと云われるか」
「第六軍が孤立して分断されていることは既にご存じであろう。貴殿らは第六軍の助太刀に向かっているところだとお見受けする」
「西の国には関係あるまい」
ストラボは眉をつり上げた。
「それとも何か関わっているとでも云われるか」
「違う」
隊長は慌てて否定した。
「賊は我らが国境警備隊の眼と鼻の先の村を焼き、穀物を奪い、領民を殺して、老人や子どもを川に投げ込んで通り過ぎたのだ」
背後にいる西の国の兵士たちの眼が怒りに燃えていた。
「黙っていられようか」
「その賊が帝国領に入ったと」
「間違いない」
「賊の風体は。それならば云えるであろう。本当のことならばな」
「青銅色の鎧だ」
かみつくように隊長は吼えた。
「生き残った者はそう云っていた。赤い旗も見えたとな」
不自然な沈黙がおりた。タキトゥスの隣りでなぜかマイウリの顔も強張っていた。ストラボは何かを考えているようだった。
「なるほど」
ややあって、ストラボは隊長に告げた。
「どうやら本当に賊を追いかけてきた国境警備隊の様子。信じよう」
「ありがたい」
「このまま速やかに帝国領から立ち去るのならば不問にしてもよい」
「かたじけない」
「直ちに西の国に戻られるか」
「そうする」
「わたしは第七軍近衛将校ストラボ。ストラボティテリという。わたしの責任において見逃してやろう」
ストラボは西の国の部隊を返してやった。
西国の国境警備隊が背中を向けて立ち去っていった。戦闘にならずにほっとしながら七軍の兵士たちも身構えをといた。
「最初から見逃すつもりでいたのだ。こんなのは様式美だ」
「ストラボは、本名をストラボティテリというのか」
「実はもっと長いのだが名乗ったところで誰も憶えない」
タキトゥスに笑ってみせて、ストラボは「行くぞ」と中断されていた道行の続きを隊に促した。
「前に来て道案内を、フラミニウス」
「は」
視界の端からフラミニウスが出てきた。それまでフラミニウスはいつでも奥の森に逃げられるように目立たぬ場所に馬を寄せていた。
「今の隊長が気になることを云っていたな」マイウリが後方からストラボに追いついてきた。
「聴こえていたか」
「青銅色の鎧」
「まさかな」
ストラボとマイウリが囁き合っていた。
四軍の方が先に軍列を整え終えていた。宿営地の遠い七軍は後からやってきた。
「またアフロディテさまの第七軍が先陣ですか」
「お気の毒に」
四軍の兵たちは本気で気の毒がっていた。何も女の将に毎回斬り込み隊長を任せなくてもよいではないか。一番後から追いついていただいて残党狩りでも任せておけばよいのに。
第四軍の将軍は顎髭が自慢だった。その自慢の顎髭を撫でながら将軍は鼻で笑った。
「よく見ておけ、お前たち」
「速い」振り返った将兵が愕きの声を上げた。もう近くまで迫っている。
みるみる近づく第七軍は速力を落とさぬまま整然と隊列を保ち、背後から四軍を追い抜かして行こうとしていた。
「あれが姫さまと第七軍だ」
髭将軍は剣を引き抜くと、斜めに突き出して将アフロディテに馬上から挨拶を捧げた。
高速で馬を駈けさせて過ぎていくアフロディテは兜の端に手をかけて将に頷き、指先を揃えたその手をすっと振って応えた。白い流星のように第七軍は過ぎ去っていった。
「抜剣!」
アフロディテが叫んだ。
煌めく剣が太陽の下に立ち並んだ。白刃が中央から一枚の布のように左右に広がっていく。
「歩兵に構うな。敵陣第二戦列まで叩いたら脇に流れて第四軍の後方に引け」
盾でも剣でもまともにぶち当たれば吹っ飛んでしまうアフロディテは逆に馬の速度を落とすといつものように少数の護衛を連れて後ろに下がっていった。
「突入せよ」
盾と盾がぶつかり合い剣と剣が打ち合った。平原に戦の重たい地響きがおきた。
始まった戦いを後続の四軍は眺めていた。七軍が引きはじめたら間をおかずに突撃していく態勢を固めて今か今かと待っていた。
敵布陣の後方から外側から回って出てくる隊があった。青い鎧の一群は戦闘箇所を避けて真っ直ぐアフロディテを目指していた。それは離れた場所からでないと分からない動きだった。
アフロディテは砂埃の立つ眼の前の戦闘に気を取られており、接近してくる騎馬隊には気づいていなかった。ちょうど七軍と四軍の間にアフロディテはいた。
「あれはいかん。青鎧だ」
見ていた顎髭将軍は呻いた。
「護衛隊。姫をお助けせよ」
四軍の前列からすぐに髭将軍側近の護衛兵が救出隊として飛び出して行った。
「戻れ、戻れ」
髭将軍の将兵たちは声を嗄らして腕を振った。四軍の将兵たちは一斉にアフロディテに呼びかけた。
「馬を駈けさせてこちらに! 姫」
「アフロディテ姫こちらに」
第四軍の髭将軍は待てぬと判断して隊列を崩しても前進を始めた。
アフロディテはようやく異変に気が付いた。近衛兵たちもはっとして馬首を回しアフロディテを中央に囲って第四軍の線まで引こうとした。そこに青い鎧が襲い掛かっていった。
髭将軍が差し向けた四軍の救出隊も突入していった。砂塵と混戦の中でアフロディテの鎧姿と馬の首が見え隠れしていた。
「間に合え」
「逃げてくれ」
姫は剣を抜いていた。四軍の将兵は悲鳴をあげた。前のめりになりながら男たちは叫んだ。アフロディテが青い鎧に囲まれていた。青銅色の鎧に圧し包まれて姫の手が馬の手綱から離れたようにみえた。
「アフロディテ姫」
砂埃が過ぎた。乗り手を失った馬が彷徨っていた。戦場の大地に細い剣が落ちていた。アフロディテの姿はそこにはなかった。
》続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます