第二話 駐車場

 上の階の椅子を引く音で目が覚める



クッションに顔をつけて寝ていたからだろう

眼圧の上がった目は世界をすりガラス状に

描き変える


「二十三時…… あっ! 」

ベットから飛び起きると

鏡で容姿を確認する暇もなく



部屋を飛び出たのだ

近視の目にレーザーのような街灯が

五メートルおきに彼女の頭を突き刺す


パジャマ着で走る女

夜逃げとでも間違われているのか


走り去る大人共は

私をパンダを見つけたかのように凝視していった


 都会にしては薄暗い道を抜けると

一つ大きな駐車場がある


駐車場の入り口には

黒いキャップを被ったキツネ目の

女がマスク越しでも分かるニヤけ顔を見せる



「お客さん、今から彼氏と夜逃げですかい?」

キツネ目の女は

名を鈴鹿 鈴


私と二人でいたずら部の結成者である

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る