「無垢」


何かを探していた。

とても大切な何かだったと思うのだが、今は思い出せない。


辿り着いたのは真っ白な部屋だった。


「無機質」


そんな言葉がとても似合う何もない部屋。

ここでは二度と朝には出会えない。


何からも守られる代わりに、何も得ることのできない場所。


今の自分には妙にここが落ち着く。

外には煌々と輝く太陽があるが、

皆見ているのはそれによって作り出される影ばかりだ。


私の探し物もその影の中にきっとあるのだろう。

そんな気がしていた。

でもそれが身を引き裂かれるほど怖かった。


そろそろ、行かなくちゃ。


この部屋のドアノブは一度触れれば壊れてしまいそうに脆い。

二度と戻って来られないだろう。


そっと。一歩踏み込む。


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