「面影」


手を伸ばせば届く距離にいた。

でも届かなかった。

またねと呟きながら朽ちていく僕を見つめる。


君はまた雨を降らす。


そして目の前で魔法が解けていく。

ゆっくりと、幻想的に。


君がじゃあねと泣いて笑う。


僕は急いで未来を照らすように駆け出す。

確かなのは数秒前まであったこの手の温もりだけだった。


忘れないように、無くさないように。

消え入るその温もりと共に追いかける。



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