「秋雨」


生ぬるい雨が頬を伝う。

それは思いのほか心地いいものだった。


だから雨が泣き止んでしまったら

きっと世界は寂しくなってしまうだろう。


私は人混みに揺られ身を任せている。

行き場などどこにもありはしない。


ただただ、強さを求めていた。

きっと何かに打ち勝つ強さではない。

自分が独りにならないように、傷付かないための強さが欲しかった。


雲間に光が差し込む。


何かがまた頬を伝う。


伝ったものが何なのか、その答えを私は持ち合わせていなかった。



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