07 学外活動・後編
昼食を取った後、あたしたちはふれあいコーナーに向かった。
もふもふの、可愛い生き物を膝に乗せ、その感触を楽しむ美少女たち……。
まるでここは楽園か何かか? キラキラとしたオーラまで見えてくるような錯覚に陥り、目の前がクラクラした。
ここにきて、ようやくあたしは、自分が凡人であることをまざまざと思い知らされた。
「ねえ、ケイカちゃんも乗せてみなよ」
ミレイは茶色のモルモットの背中を優しく撫でながら、上目遣いであたしに言った。
「あたしはパス」
「こんなに可愛いのに……」
可愛いのはあんたの方だ、という一言はしまっておいた。
ここを一番楽しみにしていたハイネは、きゃあきゃあ言いながらシホに写真を撮ってもらっていた。
「これもまたSNSにあげるのか?」
「もちろんだよシホ! ボクのフォロワーだって、今日動物園に行くこと知ってるんだから」
「あまりそういうこと書くな。ずっと前から言ってるだろ……」
シホは、ハイネのSNSアカウントには一万人ものフォロワーが居ることを教えてくれた。自撮りをあげる度、増えて行ったらしい。そりゃあそうだろう。
「苦労してるんだね」
「ケイカ、わかってくれるか?」
スマホを操作しながらため息をつくシホもまた、中性的な魅力に満ちていた。彼女だって、SNSを開設したら、かなりのファンがつくことだろう。
それから、アイリとヒロミも、それぞれウサギを愛でていたが、非常に絵になっていた。
「ウサギってあったかいね、ヒロミ」
「アイリもあったかいよ?」
「だからくっつくなって!」
そうは言うものの、膝にウサギが乗っていて動けないアイリは、ヒロミとも触れ合うしかなく。寄り添う二人の様子は、まさしくバカップルそのものだったが、小さな生き物を介しているお陰か、どこか神聖なものにも見えた。
さて、なんでこんなに美しい少女たちと自分が、一緒に行動しているのだろう?
そんなことを考えてしまい、毛玉たちには関心がいかなかった。
「じゃあ、最後は観覧車に乗ろうか!」
ひととおりふれあいが終わった後、ヒロミがそう提案した。この動物園には、小さな遊園地が併設されていたのだ。
「わ、わたしはやめとく」
そのとき初めて、あたしはミレイが高い所が苦手なのだと知った。あたしはそうでも無かったが、彼女を一人取り残すのが可哀相だから、一緒に残ることにした。
あたしとミレイは、観覧車のそばのベンチに座り、他の四人を待つことにした。そして、あたしは先ほどのことを口にした。
「なんかさ、理科部って、あたし以外みんな可愛い子が揃っちゃったよね」
「ケイカちゃんだって可愛いよ?」
「お世辞はいいから。なんかさ、さっきのふれあいコーナーでの様子見てたら、自分が場違いなんじゃないかと思ってきた」
ミレイは困ったようにうつむき、それからこんなことを話し始めた。
「ケイカちゃんは自分を過小評価しすぎだよ。そして、周りを過大評価しすぎ。わたしたちみんな、普通の女子高生だよ?」
「普通、ねぇ……」
あたしは観覧車を見上げた。どのゴンドラにあの四人が乗っているのかは判らないが、きっとあちらからはあたしたちが見えているのだろう。
「ケイカちゃん。今日、楽しくなかった……? わたしは楽しかったよ」
「いや、楽しくなかったわけじゃない。ただ、今後が不安になっただけ」
「きっと大丈夫だよ。あの子たち、良い子だったじゃない? これから先も、きっと仲良くやっていけるよ」
「うん、そうだね」
そうは言ったものの、不安はくすぶり続けるだろうとそのとき思った。
観覧車から四人が下りてきて、その日はそれで解散した。
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