4.ネット小説をまとめるサイト

 ケータイ小説はネット小説の一部であり、ケータイ小説はとても流行していたが、そんなもんに興味がなかった。けれど理論上はネット小説の源流・古典じゃね?という話は終わらせてもらって、次は自分の話に立ち返る。


 中学生になって、ネット環境を手に入れれば、男子中学生のやることは一つである。いわずもがないかがわしいR18作品、今やソシャゲになってる作品の源流はこのころからちらほらあった。(対〇忍とか〇月作品とか)

 そしてその検索の流れでネット検索に慣れてくると、たまに小説の読めるサイトにぶち当たるようになる。しかしそこはネット小説をまとめるサイトではない。

 どういうことかというと、二次創作かどうかに限らず、そのころから「自分で自分だけのサイトを作って、自作の小説をアップしていた人がいた」のだ。

 そしてその被弾率は今思い返してもなかなかに高く、個人的な思い出としては、


「いかがわしい考えも何もなくサバイバルゲームについて調べていたら、なぜか小学生同士が男女に分かれてサバイバルゲームをする小説が書かれたサイトにたどり着き、しかもそれがロリショタR18だった」


 というのがある。

 さすがに今では起こりえないと思うが、当時はそんなもんだった。

 そして意外なことに、そんな自分がたどり着いたのは割と健全なサイトだった。

 今は探しても見つからなかったが、その名は「ネット小説ランキング」。覚えている限りでは大手だったが、覚えている限りで二回くらいデータが消えていた。

 それはともかくとしても自分はそこに入り浸り、ファンタジー、恋愛、現代、ミステリーなどにジャンル分け・ランキングされたそれらを読み漁っていた。

 ちなみに規模としては累計pvが10000行けば覇権作品だった。

 恋愛ジャンルが頭一つ抜けて大人気だったが、ファンタジーもそれに次ぐ人気があった。個人的な好みではあるが、ミステリーは今一つだった覚えがある。

 そしていよいよ本題、というか思い出語りなのだが、当時のネット小説(ケータイ小説を除く)界隈には、のである。


 もちろん物語的なテンプレという意味ではない。

 空から降ってきた女の子を助けたらそりゃ冒険は始まるし、探偵は事件に巻き込まれるし、魔法使いを目指す少年には頼れる使い魔がいた。

 しかしそういうことではなくて、今のなろう、過去ではケータイ小説的な、共通した物語要素で構成された小説ばかりではなかった、ということだ。


 


 ツンデレという言葉すら生まれたての時代に、カテゴライズされない、テンプレではないキャラクターの作品なんて、今では想像できないんじゃないだろうか。

 今でこそ平気でエロゲみたいなラインナップで幼馴染・ツンデレ・ヤンデレ・お姉さん系ロリキャラ系などなど要素ごとのヒロインが数人ワンセットくらいでネット小説にも登場するが、昔はヒロイン一人を軸に延々話が続くことが普通だった。数々のヒロインが毎巻出てくるのはむしろラノベのお家芸で、一作品にヒロインは一人か二人が普通で、ハーレムモノは時代の最先端、要は目新しかったのである。

 

 もちろん言うまでもなく、今の時代の方がいい時代である。

 それでも、(ネット時代以前の世界中の小説は大体そうなのだろうが)いわゆるなろう的ななんてもののない、ただ創作欲が見て取れる物語空間は今でも思い返すほどに楽しかった。ネット小説をまとめるサイトから個人のサイトに飛んで、ファンアートなどが飾ってあったり、訪れた人数をカウントするカウンターなどを見ていたあの頃は、予測のつかない物語にワクワクしていた。

(ちなみにキリ番ふみ逃げご遠慮ください、という用語があって、カウンターで切りのいい数字を踏んだらサイト主に報告してくれ、という意味である。報告すると、だいたいはサイトに筆者のコメントが書き込まれるだけである)


 個人的にはポストアポカリプス的な話が好きでよく読んでいた。

 ホラー作品のサイトは、こだわりが強かった。真っ黒な背景に白抜きの文字、飾られるファンアートはどれも血みどろのもの。

 こういう雰囲気を味わえる空間は、最近のネット界には減った気がする。


 そしてあの頃って楽しかったよな、と思った方は筆者とぜひ語ってほしい。

 ぶっちゃけるとこれを書いた目的は9割それである。

 あの頃のネット小説を語る人がとにかくいないのだ。なぜか。



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