7度目の人生(1)
「おはようございます。ご主人様」
「……ティンク」
相変わらずのかわいい姿。私のかわいいティンクを切り裂いたサン!あいつは絶対に許さない‼︎
「また死んじゃいましたね。剣豪でムーンは倒せたけど、吸血鬼のサンは倒せませんでしたね」
「そうだな……。だがヒントはあった。次は聖女だ!」
「……聖女になるなら、その話し方はやめましょう。よっぽどお師匠様の事を尊敬してるんですね」
半眼するティンクに向かって口をすぼめて見せる。この姿は子供らしいはずだ。するとティンクは笑ってくれた。この笑顔を守る為なら、私はなんでもできるはずだ。
「でも聖女ってどうやってなるんですか?」
「クロエの妹が聖女だったでしょう?だから色々聞いたんだけど、天界の神が神託によって決めるらしいの。私は地獄の神とはコネクションがあるけど、天界の神は知らないからどうしたら良いのか……」
「地獄の神と天界の神は仲が悪いんですか?」
「悪くないと思うわよ。良く一緒に飲み会をしてるって聞いたし……」
「じゃあ地獄の神から、天界の神に頼んでもらったらどうですか?」
さすがティンクは頭が良いと思った。私はそんなことは思いつかなかった。やっぱりティンクは頼りになる。
「それでご主人様……今回のリリアはどうしますか?」
「そうね……結局前回は改心しなかったのよね。だったら地獄の神への貢物にしようかしらお願いを聞いてもらうんだし」
「良いですね!それは素晴らしいアイデアだと思います!」
ティンクが喜んでくれた!適当に言ったのだけど、ティンクが喜んでくれると私も嬉しい。
「ではとりあえず蛙にするわね」
ティンクが頷いた。
そして私はリリアが部屋に入って来たと同時に蛙にし、いつもの身代わり精霊に後の事を頼んで旅に出た。私も流石に慣れて来た。
◇◇◇
私は大陸にある活火山の頂上へやってきた。噴火口からモクモクと上がる噴煙を煩わしく思いながら、グツグツたぎる溶岩流の中に降りていく。
「ティンク、結界から出ちゃダメよ。死んじゃうから」
「頼まれても出ませんよ」
キョロキョロするティンクと一緒に溶岩の中に入っていく。私の結界は球体だ。結界の周りを溶岩が流れていく。赤黒い溶岩はレオナール様の髪を思い出す。こんなに何度も婚約破棄されても、彼が好きな私は異常じゃないだろうか。でもレオナール様以外見えない。考えられない。どうしてここまで思えるのか……自分で自分が分からない。
そのまま降りてマグマ溜まりの中で魔法を発動する。すると地獄の神の城前に転移した。
なんだか随分と人の出入りが激しい。
「……忙しそうね」
「そうですね。それはそれとしてご主人様の今日の格好はかわいらしいですね」
「そう?一応、地獄の神に会うのだから、おしゃれしてみたの」
ピンク色でリボンがいっぱい付いたドレスはお母様が選んだ物だ。私も可愛くて気に入ってる。ティンクが褒めてくれるなら、このドレスは一番のお気に入りだ!
蛙のリリアはバスケットの中だ。かわいいバスケットだから躊躇したけど、貢物だから仕方ない。このバスケットごと地獄の神に捧げよう。
城門を守る鬼の門番に挨拶をすると、城から長い角を2本生やした白髪の執事が出てきて、私達を地獄の神の元へと案内してくれた。
地獄の神は大きい鬼だ。真っ赤な顔をしてる。とても怖い顔なんだけれど、そのつぶらな瞳はかわいいと思っている。
「フェリ!まさかフェリが地獄まで来てくれるとは思ってなかったぞ?」
地獄の神はフレンドリーだ。私と契約する時も、かわいいから良いよ!と二つ返事で契約してくれた。そう言えば何度巻き戻っても、彼らのと契約は生きている。やはり神や精霊は別次元の生き物なんだろう。
「何だか騒がしいですね。何かあったんですか?」
「ああ、前回は追い払ったんだが、今回も来るみたいだからその準備をしているんだよ。まぁ、フェリは気にしないで!」
何のことだか分からないけど、気にしないでと言うので、話を進めることにした。
私が事情を話すと地獄の神はOKと軽く返事をしてくれた。相変わらず軽い。
話しが付いたので帰ることにした。来た時と同じ様に白髪の執事が案内してくれる。
城門に行くと
「あ……ご主人様!貢物!」
「……忘れていたわ」
そうだったあまりにも簡単に返事がもらえたから忘れていた。私の右手には蛙のリリアが入ったバスケットがある。
「執事さん、プレゼントとして持って来たこれ蛙なんですけど、いらないですよね?」
バスケットを開けて蛙のリリアを見せる。そもそも何故、貢物を用意しようとしていたのか……。自分で自分が分からない。起きたてのテンションはおかしいみたい。
「おお!これは、なんと珍しい灰色の蛙!フェリ様はどうして地獄の神が蛙コレクターだとご存知なんですか!」
「まぁ、そうなの?知らなかったわ。元は人間なんだけど……それでも良いかしら?」
「人間⁉︎ 普通の人間ならば緑の蛙になるはずです!それがこの様に灰色になるとは!よほど根性が捻じ曲がってないなれば、この様な色にはなりません!なんと素晴らしい!これは地獄の神も喜ばれますぞ!」
なんとリリアが大絶賛された。リリアにこんな使い道があったとは!
執事はスキップしながらバスケットに入ったリリアを連れて行った。世の中何があるか分からない……。
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