天道ハーレム





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 ――――四人と過ごす――――



「――――ねぇ」

「…………」


「ねぇってば! 聞いてるの!?」

「……え、玲香?」


「他に誰に見えるのよ? 寝惚けてるの?」

「いや……」


 寝惚けてはいないと思うが、長い夢を見ていた気がする。


 あまり良い夢じゃなかったのか、気分が優れない。なんとも言えない不快感があった。



「明日から夏休みだから、気が抜けたんじゃないかな?」

「華絵……?」


 玲香の隣には華絵の姿があった。この光景は知っている、ずっと見てきた光景だ。


 ずっと見てきたはずなのに、なぜだろう? 凄く懐かしい気がする。



「進くん? 大丈夫?」

「……華絵、今日はウチに来るのか……?」


「え? うん、そのつもりだけど」

「そうか……」


 何を聞いているんだ俺は? なんで俺は不安になったんだ?


 華絵はいつも来ているじゃないか。なんで俺は今、華絵は来ないんじゃないかって思ったんだ?



「ね、ねぇ。今日はあたしも行っていい……?」

「え……? なんで?」


「な、なんでって……改めて言わせないでよ、恥ずかしい」

「…………」


 恥ずかしそうに目を逸らす玲香は、とても新鮮に思えた。


 なんか最近は、ずっと不機嫌そうな顔を向けられていた気がするんだが。



「え~、玲香ちゃんも来るの~?」

「べ、別にいいでしょ!」


「まぁいいけど~」

「……そうやって余裕でいられるのも今だけよ」


 いつも見てきた二人の掛け合い、なぜが凄く懐かしい。この光景は当たり前で、いつもの事だ。


 ――――もう二度と失わない。


 なぜだろうか、そんな事が頭を過った。



「――――先輩っ! お待たせしましたぁ!」

「……時雨?」


 元気よく教室に入って来たのは、後輩の時雨愛莉だった。


 こんなに元気な子だっただろうか……? そんな笑顔は初めて見た……あれ、時雨ってどんな子だったっけ?



「時雨ってなんですか!? 名前で呼んで下さいよ~」

「あ、愛莉……?」

「はいっ」


 名前で呼んでいたっけか? いや、そんな事はどうでもいいか。本人が呼べと言っているのだから。



「時雨さん、進くんに用事?」

「はい! 夏休みの事を話し合おうって」


「……あたし、聞いてないわよ」

「え~? 玲香先輩の許可とかいるんですか?」


 そもそも、この三人は知り合いだったか?


 愛莉は部活のマネージャーで……あれ? マネージャーだよな?



「……愛莉、マネージャーは……?」

「マネージャーですか? 今日は部活はお休みですよ?」


「マネージャー、またやってくれるのか……?」

「また……? えっと、私ずっとマネージャーですけど……」


 何を聞いているんだ俺は。そうだよ、愛莉はずっとマネージャーじゃないか。


 夏休みもずっと、マネージャーの愛莉と部活をやっていくんだ。



「――――はぁ、やっぱり」


 そう声が聞こえたのでそちらを向くと、雪永先輩が教室に入って来る所だった。


 誰に用事なのだと思っていると、一直線に俺の机までやって来て、不機嫌そうな表情をして見せた。



「ちょっと進君。連絡したのに、どうして返事くれないのよ」

「す、進君って……えっと、連絡ですか?」


「メッセージ送ったわよ? 放課後に生徒会室に来てって」

「生徒会室に……」


 雪永先輩は、スマホを俺に見せながらそう言った。


 クマのストラップが付けられたスマホは可愛らしく、妙に先輩に似合っていた。



「……スマホにしたんですね、先輩」

「なに言ってるの? この前、あなたに選んでもらったんじゃないの」


 そうだったっけ? そう言われれば、そんな気もするけど。


 まぁ先輩がそう言うのならそうなんだろう。そうだ、俺が選んであげたんだった。



「この後、時間あるかしら?」

「え? えぇ、大丈夫ですけど……」


「ちょ、ちょっと先輩! 進はあたしと帰るんですけど!」

「私達でしょ? すぐ抜け駆けしようとする~」


「いやいや、先輩は私と帰るんですよ? ね、進先輩っ」


 な、なんだこれは? どうなっているんだ?


 なんで皆、俺を取り合って……いや、別におかしい事なんてないか。いつもこんな感じじゃないか、そうだった。


 だから俺もいつも通り、やれやれ……って感じで皆に声を掛けるんだ。



「みんな、仲良くしてくれよ? みんな一緒でいいだろ?」


「進くんがそう言うなら」

「もうっ、仕方ないわね」

「ほんとしょうがないですね」

「不本意だけど、仕方ないわ」


 そんな感じでコロッと態度と表情を変える彼女達を引き連れて、俺は学園を後にした。


 昇降口を出た所で、クラスメイトに会った。なぜかそのクラスメイトを見た時イライラしたんだが。


 あれだな、隣に大人っぽいスゲー美人がいたからだろう。なんか凄く仲が良さそうだったけど、彼女だろうか?


 まさかな、あんな陰キャがモテる訳がない。



 俺は彼女達と夏休みの予定を話し合うために家に帰った。


 この夏休みは楽しい事が色々と起こりそうだと、期待に胸を膨らませながら玄関ドアを開ける。


 彼女達を中に入れようと、振り向いた時だった。




「――――」

「――――」

「――――」

「――――」




「――――ど、どうしたんだ? みんな」


 彼女達は俺を無表情で見つめ、その場で静止していた。俺の声に反応する様子もない。


 何が起きたのか分からず、俺は彼女達に駆け寄ろうと一歩踏み出した時だった。



「……あれ? ここ……」

「あたし何やってんだろ」

「私、早く行かなきゃ……」

「……ここじゃないわね」


 彼女達は静止したまま、意味の分からない事を言い出した。


 嫌な予感がした俺は、急いで彼女達に近づき手を伸ばす。


 しかし届かない。足を動かしても進まない、手を伸ばしても近づけない。



「な、なんでっ――――」

「――――ここにいたのか」


 その時、彼女達の背後から男の声が聞こえてきた。


 それと同時に彼女達は表情を変え、動き出したと思ったらその男に駆け寄っていった。


 そこにいたのは、先ほど見かけた陰キャだった。



「お、お前……っ!」

「悪いな、天道」


 彼女達を両腕で抱き寄せ、憎たらしい笑みを浮かべる男。


 陰キャのくせにと思ったが、瞬きをした瞬間に男の容姿が変貌した。


 見慣れた顔、見慣れた奴だった。見たくもない、関わりたくもない奴がそこにいた。



「地道ィィッ!!」

「あっはははは!」


「ねぇ、もう行こうよぉ~」

「あんなの放って置きましょ」

「なんかあの人、怖いですね」

「やっぱり私、ここが好き」


 人を小馬鹿にするように笑った地道と、地道に抱かれながら頬を赤くする彼女達が遠ざかっていく。


 俺は必死に足を動かし手を伸ばすが、距離が全く縮まらない。



「ふざけんなっ! 待てよ!」

「ゲームオーバーだ――――」



 ――――

 ――

 ―



「――――ふざけッ…………?」


 汗ビッショリで、布団から跳ね起きた。


 どうやら、夢だったようだ。最悪だ、なんて夢を見るんだ俺は。


 夢の中まで、アイツは俺の邪魔をするのか。


 念のためスマホのメッセージ履歴などを確認してみるが、やはりあれは夢のようだ。


 しかし、妙にリアルな夢だった。まるで現実かのような夢は、忘れたくても忘れられなそうだ。


 もしかしたら、ああいう未来もあったのだろうか。




 ――――●●●●●●●●――――

 ――――○○○○○○○○――――




 ……すげーいい所でフリーズしやがった。


 なんだよ、ちょっと気分転換にハーレムルートを見ようと思っただけなのに。


 仕方ないので再起動したが……気のせいかな?


 なんか再起動する瞬間、動いてたように見えたんだけど。

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