最終章 ~バッドエンドルート確定・裏道~
ルート確定・天道視点
――――本日は終業式。
体育館で行われている終業式に参加し、校長先生の話をボーっと聞いていた。
色々とあった一学期。色々あったと言うか、色々と変わったと言うか。
明日からいよいよ夏休み。周りを見れば、期待に胸を膨らませた生徒達の姿が見える。
少し離れた所には可愛らしい後輩も、綺麗な先輩の姿も確認できた。
近くにはお洒落な同級生も、昔から知っている幼馴染の姿もあった。
みんなは何が楽しいのか、ニコニコしながら校長先生の話を聞いていた。
校長先生の話というより、夏休みが楽しみだという事なのだろう。
俺はこの夏休み、誰とどう過ごそうか――――
――――一人で過ごす――――
……誰とどう過ごすって、友達と遊ぶ以外に選択肢なんてあるのかよ。
それしか頭に浮かばなかったよ。それしか選ぶ事が出来なかったよ。
部活に行っても時雨はいない、学園に来たって雪永先輩には会えない。
玲香と遊ぶ事も出来ない、華絵はウチに来ない。
数ヶ月前の始業式の時の状況とは天と地ほど違う。あの時は、こんな状況になるなんて思ってもいなかった。
この数ヶ月、俺は何をしていた?
いつの間にか周りにいた女の子達は地道と接点を持っているし、その間俺は勘違いをして迷走していただけ、そして最終的に失恋かよ。
間違ったのか? 全部、俺が悪いのか?
あの時も、あの時もあの時も、あの時もあの時もあの時も……俺の選択のせいなのか?
もう少し考えて選んでいれば、違った道も開けていたのだろうか。
――――終業式が終わり、教室に戻った。
担任の横谷先生が、一学期を振り返ったり夏休み中の注意事項などを話していた。
誰も真面目に聞いている様子はない。早く終われと、誰もが視線と態度でそれを示していた。
「――――じゃあお前ら、夏休み楽しんでこいっ!」
その言葉に弾けたように騒ぎ出すクラスメイト達。
ある者は教室を飛び出し、ある者は友達の元に駆け寄り、ある者は異性の所に向かって行った。
他のクラスからも生徒が流れ込んでくる。誰も彼もが、楽しそうに目を輝かせていた。
俺はそれを最後尾から眺める。俺の元には、誰も来る事はなかった。
「行人くん、終わるの待っててくれるんだよね?」
「ねぇ華絵、あなた大丈夫なの?」
「だ、大丈夫、ばっちり」
「ほんとかしら……」
華絵と玲香が、終わるなり近づいて行ったのは地道行人の元だった。
二人が言っていた好きな人とは……いや、本人から聞いた訳ではないのだから、考えるのはよそう。
「が、頑張ったもん……」
「追試落とすと、夏休み遊べなくなるわよ?」
「うぅ……プレッシャーかけないで」
「海、プール、バーベキュー、花火、夏祭り」
「や、やめて……」
「行人の事だから、別荘とかもあるんだろうし~」
そんな彼女達は、楽しそうに夏休みの予定でも話し合っているような雰囲気だった。
地道の場所には俺がいたはずなのに、なんで今は俺が一人でここにいるんだ。
「こんにちは」
「し、失礼します……」
珍しい二人が教室に入ってきた。
残ったクラスメイトはザワつきだすが、その二人が向かった場所を見ると、納得したと言ったような顔で頷いた。
二人が向かった先には、やはりアイツがいた。
「今日は何時に合流するのだったかしら?」
「華絵先輩の追試が終わってからですよね」
「追試……大丈夫なの? 残念会になるのは嫌よ」
「不吉な事を言わないで下さいよ……」
いつの間に知り合いになったのか、四人は当たり前のように会話に花を咲かせていた。
何を話しているか知らないが、後から来た二人も楽しそうにしているのだけは分かった。
「睦姫先輩。先輩は夏期講習とかないんですか?」
「必要ないわ。そんなもの行かなくても問題ないもの」
「じゃあ夏休み中はずっといるんですか~……あはは、邪魔~」
「なにか言った?」
「いえ、別に~」
仲良く喋る四人の中心には地道がいて、四人は時折熱のこもった視線を地道に送っていた。
何かが違えば、その場所にいたのは俺だったのだろうか? あの目が向けられていたのは俺だったのだろうか?
俺の傍にあったものは、みんな向こうに行ってしまった。
俺が、間違ったからなのだろうか――――
「――――進、帰ろうぜ?」
「……海」
色々と考え、後悔し、己の選択を省みていた時、友人の海が話し掛けてきた。
ここ最近、ずっとコイツと一緒だ。コイツなりに、俺を気に掛けてくれているのは分かっていた。
「……俺は」
「あ~……そうだ進。夏休みにさ、他校の女子と合コンしない? しようって煩い奴がいるんだよ」
「合コン……? 合コンって死語じゃないのか」
「んな事はどうでもいいんだよ! な、行こうぜ?」
海もやっと彼女を作る気になったのだろうか?
なんて、違うだろうな。海は俺の事を考えて提案してくれたんだろう。
「いつまでもウジウジしてないでさ」
「ウジウジか……」
「あれは諦めろよ? 女の子はさ、他にも沢山いるんだから」
「…………」
海は、未練がましく地道の所にいた四人に視線を送っていた俺を見ていたのだろう。
誰の目にも明らかな四人の想い。確か地道はイメチェンしてからモテ始めたらしいが、今周りにいるのは四人だけだ。
四人の表情を見たからなのか、他の女子は遠巻きに見ているだけで近付こうとはしていない。
羨望の眼差しをしている者は多々いるが、面白くないといった表情をしている者は一人もいなかった。
「ほら、選べよ」
「……選ぶ」
「俺と肩組んで帰ろうぜ~?」
「…………」
ここまで来たら、それしか道はないのかもしれない。
みんなの事は忘れて、海の言うように他の道に進むべきなんじゃないだろうか。
もう道はないのか、諦めるのか?
――――諦められない――――
他の道だって? そんなのねぇよ。
なんでこうなった、誰のせいだ?
――――地道のせいだ――――
そうだよ、アイツが悪いんだから。
まだ間に合うのか、どうすれば?
――――どうにかする――――
どうにかなるさ、どうにかするさ。
「……はぁ、本当にその道を進むのか?」
「このままで終われるかよ」
「……そっか。まぁ、骨は拾ってやるよ」
俺は諦めない。
絶対に彼女達を取り戻して見せる――――
――――――――
――――
――
―裏道
――
――――
――――――――
――――●●●●●●●●――――
――――○○○○○○○○――――
「――――これ、入ったって事か?」
「うん」
「お前さ、何考えてんの?」
「え!? ダメだった!?」
「誰がこんなルートやるんだよ」
「でも斬新でしょ? ここから主人公が代わるんだよ?」
「感情移入が出来ねぇだろ……なんで寝取り男のその後のエピソードを見せられなきゃねぇんだよ」
「…………ボツ?」
「ボツだ。寝取り男のハーレムなんて冗談じゃない。一部の人にしか刺さらない」
「で、でもきっと彼は裏で色々とっ!」
「だから! それが見えねぇって言ってんの!」
「徹夜でバグも直したのに……」
「そもそもバグの理由はよ?」
「分からないんだけど、とある場面でフリーズしちゃうんだよ、彼が」
「はぁ? とある場面って?」
「誰を選ぶかの選択時。何か選ぼうとするとフリーズしちゃうんだ」
「…………」
「彼には選べなかったのかもねぇ~」
「あほか、ただのプログラムミスだろうが」
「身も蓋もない事いわないでよ……」
「……まぁとりあえず、やるけどさ」
「うんうん。君が好きなハーレム物だからね」
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