第4話 襲撃


結局俺は狼を連れたまま山の中を彷徨う事になった。本当は早く街に出たかったけど、道が分からなかったからだ。


「ワウッ ウゥー」


狼は機嫌良さそうに声を上げながら俺の横を歩く。


こいつが狼とわかって不安になったけど、これならまぁ大丈夫そうだ。


むしろ森の中で違う生物に出会った時を考えると心強い。


「ワウッ ワウッ」


「そうか」


「ワウーーワウッ」


「あー、なるほどな」


やけに話かけてくる狼に適当に相槌を打ちながら歩く。一体何を言ってるんだろうか。


神様が言うように、この狼が俺のチャームに掛かって懐いてるんだとすれば、俺に恋してる事になるけど・・・


「そもそもお前って雌なの?」


「ワウッ!」


どっちだよ!いや、どっちでもいいんだけど、一応?


だが狼は嬉しそうに俺を見るだけだ。


「なぁ、俺達どこに行ってるかわかるか?」


俺は続けて聞いてみる。


目的地すら決まっていないのに適当に歩き出したせいで、完全に自分の居場所がわからなくなっていた。


これって遭難・・?


嫌な言葉が頭に浮かび、首を振って打ち消す。


しかし現実問題として、空腹をどうにかしなければ。このままじゃ動けなくなる。


「なぁ、なんか食べれる物を取ってきてくれないか?」


「ワウッ」


「・・・」


まぁ行ってくれないですよね。


しょうがない、自分でなんとかするしかないか。


俺はため息をついて立ち止まった。


こういう時はまずは最初に状況確認だ。慌てるとよくない。


キャンプは行ったことはないけど、キャンプ番組なら見た事がある。


例えトラブルがあっても、意外と持っているものでなんとかなるらしい。


という訳で、まずは自分が何を持っているのか確認だ。


俺は期待を込めて半ズボンのポケットに手を突っ込み、中にあるものを手のひらに取り出してみた。



○輪ゴム


○消しゴム




どうすんだよ。


くそっ、服は変えたのに持ち物はご丁寧にそのままなのかよ。あの神様役に立たねえ。


こんなんじゃ腹の足しにもならない。せめて匂い付きの消しゴムだったら気を紛らす事はできたのに。


「ウゥーー?」


オオカミが心配そうな声で俺を見る。


「・・消しゴム食うか?」


「フッ!!」


消しゴムをオオカミの口元に差し出したが、しかめ面で首を振られた。


さすが野生。匂いで食べれる物か、わかるみたいだ。


「はあ・・とりあえず水、水だけは見つけないと」


水さえあれば多少腹を満たせる。問題はどうやって水を見つけるかだ。


自慢じゃないが俺は山登りなんてしたことないから水の見つけ方はわからない。


「なあ、水どこにあるかわかるか?」


俺はオオカミの両頬を手で挟んで問いかけた。


「ワゥーー」


「み、ず」


「ウウウ」


「みぃーずぅーーー」


「ワンッ!」


「おお!?」


「ワンワンワン」


オオカミは初めて自分から俺の前に進み出た。


まるでどこかに道案内するといっているように。


「水ある場所わかるのか?!」


「ワウッ」


「よし!連れて行ってくれ!」


俺はそう叫んで狼の後ろを歩き出した。


◇    ◇    ◇    ◇     


「なぁ、ホントにこっちでいいの?」


「ワウッ」


「本当かよ・・」


もう狼のケツを見出して一時間は経っただろう。しかし一向に水にたどり着けない。


登ったり降りたりでいい加減足が限界だし、もうやっぱり自分で進路を選ぶべきか?


「ウーー」


「・・わかったよ」


しかし立ち止まった俺に狼が唸る。


不思議なもので、何を言ってるかなんてわからないのに、信じて付いてきてと言われてる気がする。


仕方ない。もう少しだけついて


「動くなっ!」


「!?」


突然の怒鳴り声に俺と狼は立ち止まって周囲を見渡した。


「手を上げろ!」


また大きな声が鳴り響く。いつの間にか、5人ほどのフードを被った人間が、四方から弓矢で俺に狙いを定めていた。


「ななななんだお前ら!?」


「ビュン」


「うおっ!?」


喋った途端に弓矢が俺の鼻先を掠めて飛んでいく。


構えていた一人が俺に向けて矢を放ったのだ。


「ワウッ!」


瞬間、狼が吠える。


どうする?俺が言えば狼はこいつらに襲いかかるかもしれない。


しかしその隙に逃げれるか?


「狼を大人しくさせろ!狼から殺すぞ!」


「ウゥー!!」


「ま、まて!落ち着け!」


俺は反射的に狼に抱きついた。


狼は首をひねって戸惑った様に俺を見る。


「よし。そのまま座れ!狼には大人しくするように言え!」


「は、はい。おい、落ち着け、いいな?大丈夫だから」


「ウウ・・」


俺は結局地面に座りながら狼をなだめた。


今の俺じゃどうやっても逃げ切れないだろう。


「よし、動くなよ」


それを見た男達は俺と狼を取り囲む。


そして背の高い奴が俺の前に槍を構えて進み出たて問いかける。


「お前はどっちだ?」


「ど、どっち?」


どういう意味だ?男か女かってことか?見てわかんないのか?


「早く答えろ!」


「おおとこです!」


「・・・殺すぞ」


「えええ?!」


男は殺されるのか?!今から心は女ですって言って誤魔化せるか?


「早く答えろ!お前はどっちだ!?」


「ワンッ!!」


しかし俺が答える前に狼が唸り声を上げて俺と槍の間に割って入った。




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打倒魔王?いやいやハーレムで! 梅ちゃん @fujiki2018

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