出立
Δ
翌朝、私は目が覚めると見知らぬ天井を見上げました。
いえ、寝起きの
この街の巫女神官であるクランフェリアさんが管理する聖堂敷地内、彼女が住む母屋の離れ屋に泊めさせてもらっているのでした。
「ふわぁ……ねむ……」
まだ眠気が抜け切らないまま着替えをしていると。
ふと目が移った窓の外にヒルドアリアさんの姿が見えました。
なにやら体操のような動きで身体を動かしています。
何となく誘われるように離れ屋の外へ出てみると、肌寒さの中で熱風のようなものを感じました。
視線を向けた先にはもちろんヒルドアリアさん。
そして、彼女の足元から弧を描くように
やがて
不死鳥は雲1つない青空の中で悠然と風に乗り、大きく旋回しながら飛行を続けます。
朝の眩しい陽射しに手を
「……天気の良い日は
そう言って不死鳥の主は大きく伸びをします。
「あたしの
くすくすと笑うヒルドアリアさん。
いえ、おそらくあたしより遥かに強力な力を備えた何か。
昨日、クランフェリアさんの
《……やはり、あなたの
人々の信仰心はおろか、私自身が神に対する不信を抱くこの力の存在意義。
大空を自由に飛び回る白い不死鳥を眩しく見上げながら、私はヒルドアリアさんに問いました。
「……私もあなたの
白と朱の修道服を身に纏った少女は穏やかに空を眺めながら答えます。
「――
私の
血のように赤い騎士の
それはおそらく。
記憶を失くした私のこれまでの生き様を表したもの。
そして、これからも。
この先、何があっても私は身1つで『グリムリンデ』とともに立ち向かわなくてはいけないのでしょう。
たとえ隣に立つ巫女の少女と戦うことになったとしても……
「さあ、リエルテンシアさん。そろそろ出発の時間ですよ!」
ヒルドアリアさんはいつの間にか
ヒツギさんが蒸気自動車の準備をして私たちを待っています。
満面の笑顔で彼に走り寄ろうとする彼女に、私は訊いていました。
「ヒルドアリアさんは……なぜ私に優しくしてくれるのですか!?」
「――困っている人を助けるのに、理由はありませんからっ!」
あまりにも簡潔で分かりやすい答えを返されてしまうのでした。
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