第48話 不知火とは


 翌日、神社へ予定どおりにやってくる。


 沙織と一緒に賽銭箱の上にある本坪鈴をカランカランと打ち鳴らし、神さまに彼女との再会のお礼をした。それから2人で社務所に立ち寄り御守りを選んでゆく。俺が彼女に選んだのはハートの御守り。


「はい、浩介。これプレゼント」

 沙織が恋愛成就の御守りのお返しに渡してくれた。


「なんだぁ、これ? ハートがないじゃん」


「厄除けの御守りやろ」


 おまもり袋にはハートではなく、残念なことに恐ろしい一匹の昇龍のマークが描かれていた。


「沙織、恋愛成就やないのか?」


「もう2人は離れないという浮気封じや」

「お~い。勘弁してくれ」

 

 俺の嘆きを知り、正人たちから笑われてしまう。俺たちは神殿に上がり、神主から不知火まつりの謂れを耳にしてゆく。


「不知火」は今日でも夏の丑三つ時、海岸から数キロメートル離れた沖合いに、始めは一つか二つ、その後「不知火(ふしらび)」と呼ばれる火が出現する。それが左右に分かれて数を増やしていき、最終的には数百から数千もの火が並ぶ不思議な世界が現れてくる。


 その距離は4〜8キロメートルにも及ぶ。かつては「龍神の灯火」と恐れられ、付近の漁村では不知火の見える日に漁に出ることを禁じていたと聞く。この町の人々は神の祟りを恐れ、遥か昔から火の神の怒りを鎮めるために舟を沖合いに繰り出し、まつりごとをしてきたという。


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