第47話 ふたりの再会


 そこにいたのは紛れもなく

 沙織だった。口火を切ったのは彼女からだ。


「浩介、待ちくたびれたよ。ずっと、会いたかった」


 彼女は「コーン」と静寂な佇まいを破る水音に耳を傾け待っていたようだ。着ているワンピースの裾が水滴で濡れている。俺が神前式にいるのに気づき、終わった後に正人に相談を持ちかけたらしい。



「沙織、どうして熊本に?」

「母さんがそろそろ帰ってこんかと……」


 沙織は元カレの三回忌も終わり、母親から里帰りを勧められたらしい。


「いつから熊本に?」

「年末前に戻ってきたの」


 母親の知り合いとなる神社で年末年始のアルバイトをするにつれ、巫女舞に興味を抱き猛特訓をしたという。


「学校は?」

「一旦、中断や」


「いっぱい、話したいことある」

「わたしも。なんで、横浜へ会いに来てくれなかったの?」


「行ったさぁ。手紙もだした。本当や! 嘘じゃないって……」


 中庭に夜のとばりがおりるまで、縁側に座り積もる話をしてゆく。その時、正人の母親から声がかかってくる。ずっと、俺たちのことを心配していたらしい。


「浩介しゃん、疲れたやろう。彼女にも座敷に上がってもらいなっせ。皆

帰って静かになっとるけん」


「おばさん、ありがとう」


 その言葉に甘え、正人たちも加わり若い連中だけで集まり、彼女とのこれまでの経緯を話題に花を咲かせてゆく。



「浩介さんは冷たいんやから」


「おいおい、違う違う」


「いや、それは浩介が悪い」


「そうや。沙織さんは待っていたんや」


 それらの言葉は正人夫婦からのもの。親友まで裏切りやった。


「そうだ、明日神社の祭りや。これも何かの縁やろう。4人で行こうぜ!」

「ダメや。お母さんと子供も一緒や」


 子供が出来ると女性は強くなると聞く。もうすっかり女房の尻に敷かれているようだ。彼らは家内安全の御守りを授かりにゆくという。でも、目の前の仲の良い2人を見ると、ますます羨ましく思っていた。


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