第40話 夢のような話


 もちろん、夢のような話だ。


 でも、希望を叶える為には夢でも良いからチャレンジしなければ始まらない。自分のもつ運にもかけてみたくなっていた。

 そのためにはどんな苦労もいとわない。事前に新郎の正人と式の段取り、一発芸の内容をわざわざ打ち合わせまでしている。

 

 しかも、仮に当選した場合、特急列車が熊本駅に到着するのは、彼等の神前結婚式ギリギリの時間となるはず。

 正人には迷惑かけないようキャッチャーミットと野球のボール、バットなどを用意しておくよう頼んでいた。


 結果は──── 今夜の……

 飛行機切符が手元にあることで分かる。


 残念ながら、神さまの思し召しは得られなかった。やはり、俺は持っていない男。


 確率という壁に閉ざされてしまう。俺が入手できる確率1/3590、沙織も同様。2人の確率を合算すると、宝くじより困難なものとなる。まして、一方的な片想いとなり、彼女がチケットを申し込みする保証など何処にもないのだ!


 ※

 日頃の行いも芳しくなく、夢破れて今夜の飛行機で先乗りする予定でいた。

 羽田から熊本空港まで約2時間、移動含め考えても今夜の便に乗れば充分2人の式には間に合うはずである。


 分かっていた事とはいえ、心残りでどこかにぽっかりと穴があく気持ちとなってしまう。今や「諦めの境地」という言葉しか思い浮かばない。


 沙織、そこにいるんやろ。

 何処かで生きているなら教えて欲しい。

 俺はどうしたら良いのや?

 弱気な虫が顔を出してくる。

 本当にもう永遠に二度と会えない運命なのだろうか………

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