第39話 ドリームチケット
学校帰りに喫茶店へ立ち寄っていた。
カウンターの上から流れるテレビのニュースに唖然となり、画面に釘付けになってゆく。
「来月末で、日本全国からあのブルートレインの60年にも渡る歴史が閉じようとしています。最終ランナーとなる熊本行きの寝台特急のチケットは、本日深夜の0時からインターネットで予約開始…………」
正人からは結婚式当日に飛行機で一刻も早く来いと云われている。けれど、もし予約ができれば、今夜、あの寝台特急のさよなら列車に乗る予定だった。
ふるさとへの旅立ちは前回と同じ、東京駅発06時03分。“撮り鉄”みたいなひとりで感傷にひたりたかった訳ではない。
在来線の特急指定席は1ヶ月前の予約が必要となる。ところが、熊本への最終ランナー列車は、案の定、宝くじに当たるような倍率となり、世間でドリームチケットと呼ばれ、話題となっていた。
もう一度、夢の寝台特急秋風に乗らなくてはいけない。沙織との最初の出会いもこの列車だ。2人が運命の糸で繋がっているとすれば、季節は夏と春の違いはあるけれど、きっと最後の列車で叶えられるはず。
もしかしたら、沙織も同じことを考えているかもしれない。そうすれば、彼女と会える。こうした事情を知らないあかの他人からすれば、奇妙で馬鹿馬鹿しい夢と希望を抱いていたものだ。
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