第38話 夢と希望にかけて


「ああー暖くて良い天気だ」


 早くも年明けて三ヶ月。春うららの長閑のどかな天気が続くと、南の国から桜の便りが届いてくる。明日、正人のハレの日を迎えることになる。といっても、既に2人の子持ち、入籍も済んでいるはず。


 父には明日帰るからと伝えてある。

頑固おやじからは「丁度良い日和だ。今年は不知火ふしらびの夏まつりが、神社の修繕で春の季節へ前倒しになった」と聞く。「明後日がその開催日。夏から春に変わるのは100年に一度のこと。正人は縁起の良い奴だ」ともいう。


 大学も期末試験が終わり春休みとなる。間も無く、運が良いのか、4年生となることができた。未だに放蕩三昧な生活であるが、要領だけは良い。


 けれど、相変わらず、新たな彼女は出来なく、実家の妹からは「だらしない兄ちゃん」と揶揄からかわれている。もちろんのこと、沙織からの正月の挨拶など届くあてもなく、大願成就は何処へやらである。


 このままでは、寂しいまま大学生活も終わってしまう。唯一の救いは教員採用試験が夏に迫り、少しずつだが試験勉強の速度を上げていた。


ところが……

もうひとつ、チャンスが1ヶ月前に訪れていた。この機会を絶対に逃してはいけない。俺は間違えのないよう、確実に手順を踏んでゆく。もしかすると、神さまが授けてくれた運命の扉かもと信じて…………




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