第28話 理解したくないタイプの文化祭

 聖奇跡<セイントハート>学園


 超絶お嬢様の学校で、大企業の経営陣・貴族や名家といった、上流階級の令嬢が通っている。


 本来なら莫大な資産が無ければ敷地を跨ぐことすら許されない学校だが、唯一、招待状があれば入ることが可能だ。


「でけぇ……」


 とにかく敷地も広ければ、校舎も大きい。


 初めて踏み入れた聖奇跡は、同じ日本とは思えないような場所だった。


「それにしたって、通りすがりの人々のオーラがすごい」


 文化祭とあって、女学生以外の人がたくさんいた。


 しかしどの人も、男は超高級な服装、女は上品なドレスを身につけ、上流の風格を漂わせていた。


「……」


 この文化祭に、ドレスコードはない。


 しかし、いざという時のために、仕事で使うビジネススーツを着ていた。


(ナイス判断だ、俺)


 が、別にただのビジネススーツを着てる男なんてほとんど居なかったので、それはそれで浮いていた。


 まぁ、ボロい普段着で行くよりかはマシだと言い聞かせる。


 蛍ちゃんと合流する時間まで、まだ余裕がある。


「とにかく回ってみるか」


 俺は決心して、人ごみの中に入っていくのだった。


***


「的あて! 的あてはいかがですか! ヘリコプターに搭乗して上空からスイカを落とす的あてはいかがですか!!」


「シャンパンタワーあります!! 3年3組のシャンパンタワーいかがですか!!」


「潮干狩り体験です! 学園が保有するプライベートビーチで潮干狩りできますよ!!」


 いろんな出店が並んでいた。


 早速気になる店で話を聞く。


「的あて、大人一人」


「はい、料金10000円です!」


 高い…


 が、とにかく払ってみる。


「それじゃあ、こちらのヘリに乗って下さい!」


 初めてのヘリ。


 女子中学生の店員さんと一緒に乗り込み、上空まで飛び上がる。


「お客さま、ちゃんとスイカを持ちましたね」


「はい」


「タイミングよく落として下さいね」


「はい」


「3、2、1、今です!」


 俺はスイカを落とした。


 そのまま地面に落ちる。


 潰れたスイカが真っ赤な果汁を散らし、地面に染み込んでた。


「やりましたよ!! 50ポイントです!!」


 女子中学生の定員さんに、さらにスイカを渡される。


「あと2個残ってます! 頑張って下さいね❤️」


「……」


 これが金持ちの遊びかぁ……


***


 ヘリから降りる。


「惜しかったですね、もう少しで最高得点でしたのに!」


「あの、スイカは」


「ああ、使ったスイカはこちらで処分を——

 え? もしかして食べたいんですか?」


 俺はうなずいた。


「不思議なお客さん。まるで庶民みたいですね!

 いいですよ。ご要望通りに。

 執事たち! 早くスイカを拾いになって!!

 すこしお待ちくださいね」


 しばらく待った。


「ハイどうぞ!……またの機会、お待ちしてますね!」


 的あて屋さんから離れる。


 いや、面白さは理解できるのだが……


(正直、理解したくないタイプの遊びだった……金持ちやべぇ……)


 ……周囲を見ても似たようなお店ばかりだった。


(うーん、ちょっと早いけど、蛍ちゃんの喫茶店に行くかぁ)


 俺は、袋いっぱいのスイカをシャリシャリ食べながら、喫茶店をしてるだろう2年生の教室へと向かうのだった。

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