第27話 文化祭前

「おはようございます」


「おはよう」


 いつも通りの電車の中、挨拶する。


「……」


「……」


 もう俺たちは恋人同士で、心と心を通じ合わせた関係だ。


 とはいえ、さすがに人前でいちゃつくことは風紀的に許されない。


 いつも通り文通する。


【文化祭ってもうすぐだったよね】


【はい。来週にはあるかと】


【何かするのかい?】


「……」


 罰の悪そうにする蛍ちゃん。


 何かあるのだろうか?


【喫茶店です】


 なんだ、普通じゃないか


【けど、私だけ異常に仕事量が多いんです】


 なん……だと……


 これはいわゆるいじめに違いない。


【なんてことだ。俺に何か手伝えないだろうか?】


【いいえ、手伝いなんてそんな……】


【先生とかに相談すれば——】


【いいんです。変な目で見られるのはもう慣れてるので】


 でも、と言おうとする。


【その気持ちだけでうれしいです。ありがとうございます】


 逆にお礼を言われてしまう。


【でもすみません。一緒に回る時間が少ないかもしれません】


 悲しそうな眼をする蛍ちゃん。


 俺は、よし、と決断する。


【だったら、途中で逃げよう】


「え」


【大丈夫、俺に秘策がある】


 自信満々に伝えるのだった。

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