第22話 大人になるまで

【中間試験はどんな感じだった?】


【はい! バッチリです!】


 なるほど良かったらしい。


【これでようやく遊びに行けますね】


 先週も普通にデートしてたような……


【気持ち的にはテストを意識してたので……少しだけ不安でした】


 なるほどね


【ねぇ、もしよろしければなんですけど、次のデート先は】


 なんだか、かなりもじもじした様子だ。


 かなり特別な場所なのだろうか?


【私のおうちでするのは、どうでしょうか】


「——……え」


 ついつい素っ頓狂な言葉が出るのだった。


【もちろん、両親はお出かけしてる時間ですよ。

 それに、春ちゃんが遊びにくるそうなので、一緒にどうかなって】


【なら、問題なしだね】


 俺はホッとする。


 YesロリータNoタッチは絶対なので、二人きりの密室はヤバいのだ。


【育滝さんって、実はかなり紳士ですよね】


【そうかい?】


【恋人と二人きりになりたがらないなんて、育滝さんぐらいです】


 それはたしかにそうかもしれない。


【蛍ちゃんの魅力に我慢できる自信が無いからね】


「ほんとうに頭の硬い人です」


「?」


 ぼそっと、蛍ちゃんが何かを言った。


 俺にはあまり聞き取れなかったが、聴き返しちゃいけない雰囲気を感じた。


【大人になるまで、俺は気長に待つつもりだよ】


 そして、そう書いた。


「へ——」


【蛍ちゃんが大切だから、ちゃんと俺も見守る】


「……」


 蛍ちゃんは何とも言えない表情で。


【——だったら、ほんの少しだけ、私も我慢します】


 そして、ふふ、と笑って書き足す。


【でも、我慢できないときは、覚悟してくださいね♡】


「え——」


 どういうことなの?? と叫びそうになる俺なのだった。


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