第19話 マッサージで気持ちよく――

 靴を脱ぎ、靴下も脱ぐ。


 生足を湯船につける。


「ん……!」


 湯の暖かさで、足にしびれが走る。


 そして徐々に、温度になれていく。


「ふぅ……」


 ぽかぽか感に浸る。


「気持ちいいです。空気も澄んでて、とても安らぎます」


 俺も同意見だ。


 特に、紅葉が広がる景色を見ながら、浸かる湯は最高だった。


「ずっと勉強ばかりだったので、開放感がすごいです」


 うんうん、と同意する。


 デスクワークも、勉強も、どうしても体が凝り固まるからだ。


「毎日来たくなります」


 いつもくたくたになるほど頑張ってるんだね、と伝える。


「……そうかもです。でも、頑張らないとすぐに追い抜かれちゃいますので」


 ものすごいプレッシャーの中、蛍ちゃんは必死に堪えている。


 友達も居ない中で。


 俺はもっとなにかしてあげたいと思った。


 肩を揉んであげようか、と伝える。


「え……肩ですか……?

 確かに、ここ最近悩んでましたけど……」


 悩みが見える。


 俺はマッサージに自信ありだと伝えた。


「だったら、お願いします。……痛くしないでくださいね」


 俺は、湯船から出て、蛍ちゃんの背中側に回る。


 そして蛍ちゃんの華奢な肩にふれた。


「ん――」


 かるくほぐすように、撫でる。


「あ……くすぐった……」


 肩から背中の広い範囲を、撫でるようにもみほぐす。


 背骨の感触を楽しみつつ、真剣に柔らかくする。


「……ひゃん、……っ! ……あ、あ」


 一通り背骨と肩の肉をほぐしたところで、肩をつかむ。


 もみ、もみ、もみ


「ふぅ……ん……あ……」


 痛かったら言ってね、と聞くと。


「すごく気持ちいいです。このままもっと続けてほしいです」


 この言葉を聞いて、さらにモミモミする。


「ふぁあ……」


 気持ち良さのため息だ。


 もう目がトロンとゆるくなる。


 本気で疲れていたのだろう。


 ある程度で、揉むのを切り上げる。


 ツボを押すから刺激が来る、というと。


「それって痛くないんですか?」


 すごい凝ってたら痛いかもだけど多分大丈夫。


「だったら……お願い……します」


 肩の先端を親指で押す。


「あん!!!」


 喘ぎ声。


 気持ちいい証拠だ。


 ツボをぐりぐりと刺激を与える。


「あぁぁぁぁ~~~――! すごく……効いてます……! んんんっ!!」


 最後に、チョップで、肩たたきする。


「あっ! あっ! あっ! あっ!」


 たったの5秒間に、できる限りテンポよく叩く。


 最後、叩き終わった瞬間に、蛍ちゃんは、背中から倒れ込んだ。


 俺の股の間に、蛍ちゃんの腰がすっぽり収まっている。


 蛍ちゃんは、俺を下から見上げていった。


「とっても、気持ちよかったです……」


 火照った体は、汗で濡れていた。


 おしゃれな秋服の脇や胸元は、特に汗を染み込み、色が変わっていた。


 足湯のおかげか、新陳代謝が上がっているのだろう。


「体が羽のように軽いです……もっとして欲しいのですけど……その、だめですか……?」


 服の襟部分の隙間が空いており、蛍ちゃんの胸元が見えた。


 白い下着が見えていた。


 ムラムラしてきた俺は、マッサージは疲れるからまた今度、といってごまかす。


「はい、じゃあまた次の機会にお願いしたいです……」


 このまま続けていたら、きっと理性崩壊してただろう。


「約束、ですからね」


 俺は、更にマッサージの腕を磨くことを決意するのだった。

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