第18話 一緒にお風呂……?
「おはようございます」
蛍ちゃんの私服は、チョコレートのような色の長袖に、スカート。
そして、スカートの中にはズボンをつけていた。
かなり秋を意識したような格好だ。
「おはよう。大人びた格好だね。とってもいいよ」
「ありがとうございます! 色々悩んじゃいましたけど、似合ってるなら良かったです」
休日の電車は空いている。(というか、俺たちだけだった)
だから、俺の隣に蛍ちゃんがちょこんと座った。
身長差があり、俺の肩の位置に、蛍ちゃんの頭がある。
「定期券の範囲で助かりました」
「あまり遠い場所は行けないからね」
「どうしてですか」
「責任問題かな。本当は蛍ちゃんの両親にどこで何するか教えなきゃいけなんだけどね」
「……私も、そんな子供じゃないですし」
不服そうにする蛍ちゃん。
いや、見た目はもう完全に子供だけど。
「どこかでちゃんと、蛍ちゃんの両親さんに、関係を伝えないといけないね」
「——だったら、最初はママに伝えましょう。パパよりかは話を聞いてくれるはずです……多分」
「ああ……」
春ちゃんも、パパにバレたらタダじゃ済まないとか、言ってたからね。
とはいえ、いつまでも逃げ続けるわけにもいかない。
「ああ、どこかのタイミングで、かならず挨拶しに行こう」
「はい」
そして電車の中で色々会話する。
***
そしてしばらくすると駅に着いた。
駅からあまり離れていない山のふもとに、温泉宿がある。
紅葉が道を、建物を彩る。
「もう秋なんですね」
感慨にふける。
「出会ってから一ヶ月も経ってないのか」
「そうですね。私も驚いてます」
時間の流れが遅く感じるほどに、俺と蛍ちゃんの距離は近づいていたということだ。
「さてと、中に入ろう」
「あの」
蛍ちゃんは顔を赤らめながら尋ねる。
「一緒にお風呂……本当にするんですよね」
「ああ、もちろん」
「ふぇ……」
もじもじする蛍ちゃん。
「い、いちおう水着とか持ってきたので……でもそれでもちょっと恥ずかしいというか……」
「なにが恥ずかしいんだい」
意地悪してみる。
「ええと、その……恋人に裸を見せるのは何というか……うぅ……は、恥ずかしいような気がするんです……
パパとやってることは変わらないはずなのに……なんでこんなに気持ちが違うのか、うまく説明できなんですけど……」
恥ずかしそうに、奥ゆかしく。
ウブな気持ちを聞いて、俺はほっこりする。
「好きな異性同士だと、こういう気持ちになるんだよ」
「そ、そうなんですね……やっぱり」
「ああ、それに――」
というかいちばん大事なことを、今、蛍ちゃんに伝えた。
「俺の前で、裸にならなくて大丈夫だから」
「え?」
「だって、男女共用の、『足湯』に入るんだから」
「…………」
一瞬、蛍ちゃんは固まった。
「――それを先に言ってください! 意地悪です!」
怒られてしまったのだった。
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