第17話 誕生日の計画

【育滝さん!】


【なんでしょう?】


【誕生日はいつですか?】


 ということを突然聞かれた。


【4月】


 そう伝えると、しょんぼりする。


【遠いですね……】


【あと半年あるからね】


 どうして知りたかったのか尋ねる。


【誕生日近いなら、祝いたいなと思いまして】


 確かに気持ちはわかる。


【蛍ちゃんの誕生日は?】


【実は今月なんです】


 なるほど。


【だったら、俺も何か祝いたいな

 ケーキとか?】


【パパとママが誕生日パーティしてくれるので、すみませんがご遠慮します】


 俺はちょっと考えたが、あまりいい考えが思い浮かばない。


【何か欲しいものとかある?】


【そんな、欲しい物なんてとくにありません】


 これはどういう話の流れなんだ……?


 ケーキを食べたいわけじゃない


 プレゼントをねだってるわけじゃない。


「……あ」


 俺は、なんとなく思い浮かんだものを書き込んだ。


【二人だけの思い出がほしいのかい?】


 蛍ちゃんは全力でうん、とうなずいた。


 なるほど、それは俺も同じ思いだ。


 だったら、と俺は書き込んだ。


【日帰りでどこかに行こう——温泉旅行とか】


「……はい!」


 頬を赤らめながら、嬉しそうにする。


【紅葉がきれいなところがいいです】


【いいね、季節を感じる】


【とっても楽しみです!】


 そんな話をするのだった。


 蛍ちゃんと温泉。


 ……死ぬほど楽しみだ。


 俺はウキウキしながら、今日からスケジュールを立てるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る