第14話 ラブドールと少女たち

 俺は部屋の鍵を開けた。


「ここが育滝さんの部屋なんですね」


「普通のアパートですね」


 そんなこんなで部屋に入る。


「ふふふ、ここからあんたがロリコンである証拠を——」


 部屋の真ん中には、セーラー服を着た等身大ラブドール(小学生サイズ)がちょこんと座っていた。


「——って、明らかにヤバい証拠があるやんけ!!」


 動揺する春ちゃん。


 そして、蛍ちゃんも驚いたように、ラブドールを見る。


「ええ! この子、作り物なの……?」


「ああ。一人暮らしが寂しくてね」


 俺は、等身大ラブドールを隠すことなく、紹介することにした。


 隠し切れないほどの大きさだったという理由もある。


 けどそれ以上に、俺にとってのペットであり、最高のセックスフレンドを、大切な恋人に紹介しないわけにはいかなかった。


「この子の名前はアリスっていうんだけど、彼女と一緒に暮らしているのさ」


「……」


「……」


 俺は二人の様子を見る。


「この子、とってもかわいいと思います! 育滝さんにドール趣味があるなんて驚きました!」


 よし!


 嫌われてない!


 というか、普通のドールと思っているのか、ラブドールだって気づかれてない!


「とっても興味ありますね。触っていいですか?」


「あぁ、優しくね」


 そして春ちゃんは、アリスの胸を揉み始める。


「うわ、柔らか!」


「え、そうなの……あ、ほんとだ」


 つられて蛍ちゃんも、つんつんとアリスの胸をつつく。


 実質、百合プレイだった。


 しばらくした後、俺は『魔法少女ルナリアン』のBDを用意する。


「それじゃあ、再生するね」


「お願いします!」


 蛍ちゃんの目はキラキラし、ワクワクしながらモニターの前に座った。


「春ちゃんも来てください! ついに始まりますよ」


「はいはい、どんな作品なのやら楽しみだねぇ」


「本当に面白いんだって、ねぇ育滝さん!」


「ああ、その通りだ」


 そして、レコーダーにディスクを入れ、再生するのだった。


***


 2時間があっという間に過ぎ去る。


 ラストの余韻に浸った後、言葉が出てくる。


「確かに面白かった」


「そうだよね! 本当に良かったよね! わたしもう、涙が止まんなくてぇ! うぅ」


「けれどね、二人が途中から泣きまくって、すごい気になったというか……」


「うぅ! ごめんなさい!! けど、あれで泣かないのおかしいよぉ!」


「いや、泣いたよ! 泣いたけど、蛍ほどじゃないというか……」


 春ちゃんがどうやら俺の方を見てるらしい。


 らしいというのは、俺は涙で目が見えなくなっていたので、よくわからなかったからだ。


「ぅうううううう。えーん、ひっく、ひっひっひっひっひっ——うぁあああああああん!!」


「そこまで泣く??」


 もともと涙もろい性格だったが、年を取ってからもっと涙もろくなっていたようだ。


 だって仕方ない。


 原作の小説家も、挿絵のイラストレーターも、アニメクリエイターも、マジで全員天才なんですから。


 泣かないなんてことは不可能だ。


「うう、育滝さん……」


「ひっひっひ、ほ゛だる゛ちゃん……」


 俺と蛍ちゃんは抱きしめ合う。


「「よかった」」


 この【ハグ】は心が一つになった証である——


「いや、あんたらもう、逆にお似合いだわ」


 こうして、従妹の春ちゃんから、公認認定を受けるのであった。


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