第12話 2回目の図書館デート

 今日は待ちに待った土曜日。


 それなりに清潔感のある恰好をして、準備万端の状態だ。


 そして待ち合わせ場所にて、蛍ちゃんを待つ。


「おはようございます」


「おはよう」


 蛍ちゃんの恰好は、水色のワンピースだ。


 シンプルだが、オシャレに見える。


「とってもかわいい服、似合ってるね」


「えへへ、ありがとうございます」


 はにかむ蛍ちゃん。


 今は8:30、図書館はまだ空いていない。


 つまり時間があるということだ。


 俺は秘密兵器を取り出す。


「ねえ蛍ちゃん。写真撮ってもいいかな?」


「え、写真ですか?」


 俺はNikonのカメラを取り出す。


 割とお手頃価格(10万円)の逸品である。


「なんだか本格的ですね」


「思い出に残したいからね。どうかな?」


「いい、ですよ……」


 テレ顔だ。


 俺は蛍ちゃんに向ける。


「1たす1は?」


「2——ひゃん!」


 シャッターを切ろうとした瞬間、強い風が吹く。


 スカートがふわふわめくれ、白い下着が見える。


 純白な白。


 蛍ちゃんのパンツだ。


 正直、俺は興奮した。


「……ごめんなさい! 急な風で、びっくりさせてしまいました」


「大丈夫、また撮影し直そう!」


 なんといういたずらな風だろう。


 ありがとうございます。


 そうして、2回目の撮影は、滞りなく行われるのだった。


***


 図書館に入ると、俺と蛍ちゃんは真っ先にラノベコーナーに向かった。


 目的は『魔法少女ルナリアン』である。


 蛍ちゃんは2巻から6巻まで、計5冊ほど手に取る。


【一週間で読み切れるの?】


【はい、大丈夫かなと。

 文章は読みやすいですし、それに続きが読めないと展開が気になってしまうので】


 もう作品の虜になっているようだ。


 俺はこんな少女をオタク沼に引き入れるなんて、全く罪な男だ。


【アニメを見せてもらうの、約束ですからね】


 もちろんである。


 俺は、リュックに『魔法少女ルナリアン』のBDを入れていた。


【育滝さんのおうちで見てもいいですか?】


 ……?


 俺はてっきり、蛍ちゃんが俺からBDを受け取って、自分の家で見るものとばかり考えていたのだが。


【テレビもレコーダーも、リビングにしかないんです。どうしても恥ずかしいので】


 俺の部屋に、蛍ちゃんが来る……?


 大量の美少女フィギュア。


 可愛いドールたち。


 でっかいラブドール。


 萌え萌えな本の山。


 まあ、女性を招く部屋かどうか、微妙である。


 が、問題の本質はそこではない。


 13歳美少女を、男一人の部屋に入れたらどうなるかなんて、馬鹿でもわかる。


 犯罪者が誕生して、ブタ箱行きだ。


【ご迷惑でしたか……? やっぱりやめときま——】


【待った!】


 ただし、蛍ちゃんを家に招き入れない人生に意味なんてあるだろうか? いや無い。


 俺は、覚悟を決めた。


【来てもいい。明日の日曜においで】


 蛍ちゃんの顔が、ぱぁと明るくなる。


【ただし——】


「え」


 俺は、心を鬼にして、条件を付けた。


【絶対に一人では来ないこと。友達や信頼できる人を連れてきておいで】


「……えぇ!」


 図書館でも、大きい声でびっくりする蛍ちゃん。


(すまない……でもこれしかないんだ……二人っきりの個室だときっと良くない結果になる。

 俺も死ぬほどつらいけど、人の目がどうしても必要なんだ!)


 しばらく、考え込む蛍ちゃん。


 まあ、やっぱり遠慮しますと答えたとしても、俺としては構わない。


 大切なのは、彼女の未来なのだから。


【分かりました】


 うんうん、やっぱり辞めるよなって、


「え?」


【ほかの人を、連れてきます】


 どうやら、明日は波乱な日になりそうだった。

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