第5話 デートの約束

 彼女と出会って、今日が5日目。


 しかし、大きな壁が出来たという事でもある。


 なぜなら今日が金曜日であり、明日は土曜日。


 休日である。


 蛍ちゃんと、こうして会うことが出来ないなんて寂しいし、何よりもどかしい。


(よし、俺はやってみせるぞ)


 ——今日、俺は蛍ちゃんと連絡先を交換する!


「おはようございます」


 よし、蛍ちゃんが来た。


「おはよう」


 まずはいつも通りの挨拶。


 そしていつも通りメモ帳を取り出す。


【明日は休みだね

 どこかに出かけたりするのかな?】


【図書館に行きます】


【勉強?】


【半分正解】


【お、もう半分は?】


【静かなのは落ち着くので、リラックスしようかなと】


 なるほどね。


 図書館の空間を想像する。


 たくさんの本に囲まれて、ゆっくり散策して、気になった本を手に取って——


 俺もなんだか図書館に行きたくなる。


【俺も図書館に行こうかな】


 そう書くと、蛍ちゃんが、え、という表情をする。


【どうしたの?】


 俺はなんか変なことを言っただろうか?


「……」


 しばらくの沈黙の後、おずおずと書き出した。


【もしかして、誘ってるんですか?】


 俺は、はっと気づく。


 全くの無意識かつ無自覚だったが、これって——


【私と図書館に行きたいってことですか?】


 俺は彼女の様子を見る。


 嫌がってるだろうか?


 俺を試してるのだろうか?


 蛍ちゃんの目を見る。


 かすかな勇気を振り絞って、おずおずと小動物のように縮こまって、……99パーセント嫌がってないと思えるしぐさだった。


 俺は意を決して、書いた。


【行きたい。大丈夫かな?】


 蛍ちゃんは安心したような顔をした後、


【はい】


 と書くのだった。


 連絡先の交換はできなかったが、見事、図書館デートの約束をこぎつけるのだった。




———

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